研究課題
癌治療は、分子標的薬の登場もあり、決して予後の悪いものだけでなくなったが、抗癌剤は様々な臓器合併症を生じ、特に心合併症は、致命傷になることもある。癌患者の長期予後に影響を及ぼす因子として循環器疾患は重要な因子であるため、循環器合併症に対する取り組みが注目されているが、これまでの報告で、抗癌剤治療による心不全の発症予防および有効な治療法は確立していない。一方、癌患者が長生きできる様になったが、身体機能の低下は、日常生活や予後にも大きな影響を与え、その原因として骨格筋減少は重要である。抗癌剤は心筋だけでなく、骨格筋障害も生じることが報告されている。抗癌剤による心機能障害と骨格筋障害は、相互に影響していることが示唆され、これらの機序を解明し、治療法を確立することは、癌患者の予後改善につながることが期待される。その機序として、オルタナティブオートファジーの低下がドキソルビシンによる心筋障害および骨格筋障害の分子機序に関与すること仮定して研究計画を立てた。A.基礎実験:(I) in vitro:H9c2ラット心筋芽細胞およびマウス骨格筋由来筋芽細胞株 C2C12 細胞を用いて以下の実験を行った。C2C12細胞、H9c2細胞についても分化・増殖については、抑制されていることが観察された。ミトコンドリアはC2C12細胞、H9c2細胞において、分裂したミトコンドリアの増加を認めており、fissionに傾いていることが確認された。(II) in vivo:正常マウスC57BL6(WT)を用いて、ドキソルビシン心筋障害モデルにおいては、投与4週間後において左室拡大を認め、左室駆出力の低下を認めた。
4: 遅れている
動物実験室の耐震工事が以前より計画されていた。一方で、新型コロナウイルス感染症の流行で、工事の進捗が遅れた。限られたスペースで動物飼育が行われたため、少数の動物で実験する必要があった。
in vitro実験においては、形態学的な評価のみならず、ATP産生能やComplex assay等でミトコンドリア機能を評価行う予定にしている。さらにLC3、p62、Ulk1、Beclin1、Rab9、Lamp2 等のImmunoblotや免疫組織化学染色を施行し、コンベンショナルオートファジー(Con. Autoph.)とオルタナティブオートファジー(Alt. Autoph.)を評価する。in vivo実験においては、ドキソルビシンを投与し、4週間後の心機能について評価を行った。同一マウスは、4週間では心不全を生じており、消耗していることから、骨格筋については、ドキソルビシン投与後2週間後に2週間後において評価を行い、in vitroで得られた結果から、mRNAや蛋白を評価する。
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