研究課題/領域番号 |
20K07852
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
大山 陽子 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特任助教 (20583470)
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研究分担者 |
丸山 征郎 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特任教授 (20082282)
山口 宗一 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (20325814)
橋口 照人 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (70250917)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 老化 / 炎症 / 漢方薬 |
研究実績の概要 |
近年老化の病態として、内因性炎症を起因に細胞死や線維化と共に臓器障害をおこし、さらにその炎症が老化を加速させるといった新たな病態:inflammaging=inflammation + agingが明らかとなってきた。今回我々は「老化は炎症の一部である」と捉え、老化に伴う分子基盤制御の研究を腎臓を主なターゲットに抗炎症の観点から行っている。
=五苓散・成分Aの腎機能・抗炎症・抗酸化を及ぼす効果の検証=慢性腎炎モデルにコントロール、五苓散、温志の一つの成分である成分A、五苓散+成分A、腎炎モデルに上記4群を加えた計8群を作製し一定期間投与の後、血液、尿、各種臓器を採取した。生化学的解析にて、五苓散や成分Aを投与により腎機能の改善がみられており、さらに炎症性サイトカインMCP-1(monocyte chemoattractant protein -1)、活性酸素量の低下がみられた。
=腎機能改善のメカニズムの解明=抗老化因子として注目している分子がAMPK(AMP-activated protein kinase)である。AMPKは細胞の恒常性に重要な役割を果たすエネルギーセンサーであり、活性低下やその下流シグナル伝達の欠乏は、細胞障害、上皮間葉転換、線維化を引き起こし、最終的に慢性腎炎にとなる。腎臓ではエネルギー消費量が多いため、AMPK 活性は恒常的に高くなっている. しかしながら、慢性腎炎での腎細胞のAMPK活性は著しく低下し、加えて加齢でも減弱することが報告されている。さらにAMPKの活性化は慢性腎炎を改善し、加齢における治療薬としても期待されている。我々は腎組織におけるAMPKの発現、活性化を確認した。結果、成分A投与群において、AMPKの活性化が確認された。引き続き、AMPKの下流の分子群および、細胞代謝や、腎血流改善の観点からもターゲットとなる分子の探索を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慢性腎炎動物モデルは数回にわたり作成が必要であったが、それらは概ね作成を終えることができた。現在、生体試料を用いた五苓散や成分Aの腎機能改善効果の検討は概ね目途がついている。引き続き、抗炎症・抗老化効果についてAMPKを基点とした分子メカニズムの検討に移っており、当初の予定通り概ね研究は進行している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の実験計画通り、引き続き腎機能改善に対するターゲット分子の探索、さらに抗炎症効果については、サイトカインの受容体、シグナル経路の解明を含め行う。また、腎病理像での効果判定にも引き続き継続して行う予定である。さらに、主要な炎症の場である尿細管上皮細胞やマクロファージに対し、結晶ほか、アルブミンやサイトイン刺激による腎炎病態のストレス環境を再現したうえで、五苓散、成分Aによる炎症、老化の動態変化、またその制御機構、炎症因子、老化因子の相互作用の検討を順次検討する。
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