明らかな基礎心疾患のない健常人における血中心筋トロポニン濃度と臨床的な動脈硬化指標および血液指標で多角的な評価を行い、検出された血中心筋トロポニン濃度の意義、ならびにその濃度変化に関連する要因を検討するものである。 2015年にJA静岡厚生連遠州病院の健診センターを受診され、高感度心筋トロポニンIを測定した約1300名のうち、2020年度に再び健診を受診した方は約700名であった。研究計画立案時には約7割に該当する900名を見込んでいたが、本年は新型コロナウイルス感染症流行の影響を受けて健診への参加を控える傾向があったと推測している。2020年度に健診に参加された703名を研究登録し、検体を回収することができた。 2020年度に回収した703名の検体において高感度心筋トロポニン濃度測定を行ったところ、高感度心筋トロポニンI濃度の平均値は4.9pg/ml、高感度心筋トロポニンT濃度の平均値は7.5pg/mlであった。高感度心筋トロポニンI濃度と高感度心筋トロポニンT濃度はr=0.60 (P<0.0001)と有意な相関関係を示した。また、これら703名の2015年における高感度心筋トロポニンI濃度の平均値は3.8pg/mlであり、2020年には4.9pg/mlと若干増加傾向を認めるものの統計学的な有意差は見られなかった(P=0.26)。 次に、受診者のなかで高血圧や脂質異常、耐糖能異常などのない健常人297名を抽出した。線維芽細胞増殖因子23(FGF23)は、血中リン濃度の調節を行うホルモンとして知られており、健常人において高感度心筋トロポニンI、高感度心筋トロポニンTならびにFGF23を測定し、健診項目との相互関連性を検討した。
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