研究課題/領域番号 |
20K07855
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
高橋 義彦 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (80415562)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | rs6265 / BDNF / DPP-4阻害薬 / 2型糖尿病 / 遺伝子多型 |
研究実績の概要 |
本研究は経口糖尿病薬として最も使用頻度の高いDPP-4阻害薬の無効例と中枢および筋細胞から分泌され糖代謝にも関連するといわれるBrain-Derived Neurotrophic Factor (BDNF)の遺伝子多型rs6265(Val66→Met)との関連を検討することを目的とする。特に本研究申請後2019-2020年度に、BDNFがインスリン分泌促進作用をもつという報告がNature Commに発表されるなどBDNFが糖代謝の改善に重要であるとの知見が多い。すでにこの1アミノ酸置換が中枢神経系においてBDNFの分泌低下をもたらすことが示されており、本研究ではこの遺伝子多型によってValがMetに置換している場合に本糖尿病薬の無効例が増加するという仮説を立てている。我々はすでに同薬剤の無効例とやはりマイオカインとしての作用が示唆されているIL-6遺伝子多型との関連を英文誌に発表していたが、その研究の参加者316名のうち現在も岩手医科大学に通院中の185名について、遺伝子多型研究のための検体採取を計画し、当院倫理委員会に申請を行い2020年7月に受諾された。これに基づいて同意取得を行ったが先行研究より8年余り経過し対象者が高齢化していたため、認知機能障害などで自署名不能な患者を除外して合計173名より検体採取の同意を得た。2020年度2月末の時点で168名からの検体を採取しており、120名分についてはすでに株式会社ベックスに委託してrs6265遺伝子多型の解析を終了している。 なお、先行研究に比して対象者が半分近くに減少しているが、IL-6の分泌を亢進させるといわれる2つのSNPの組み合わせをもち、かつ身体活動(問診票による推計)が一定以上である場合にDPP-4阻害薬の無効例が減少するという結果はこの173名での再検討でも再現できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は316名の患者の保存検体を用いる予定であり、先行研究において他の遺伝子研究に検体を使用する可能性についても同意を得てあったが、岩手医科大学附属病院の新築移転の際に保存検体が廃棄されてしまったため、検体を再度収集する必要があった。しかし、マイオカインとして血糖低下に関与するというIL-6遺伝子の2つの遺伝子多型の組み合わせによって、IL-6分泌がより大きいと予想される要因と身体活動が多いという要因の二つが合わさった場合にDPP-4阻害薬の無効例の頻度がそうでない群と比べて有意に減少するという結果はN=173であっても確認できた点で、IL-6遺伝子のマイオカインとしての役割が検出できる条件でBDNF遺伝子分泌低下がDPP-4阻害薬の効果に影響するかしないかという当初の目的の解析に耐えうると考える。DPP-4阻害薬内服中の身体活動量については先行研究のIPAQ質問票をそのまま用いており問題ない。
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今後の研究の推進方策 |
残りの検体収集とrs6265遺伝子多型の解析を完了し、当初目的のDPP-4阻害薬無効例との関連を解析する。また先行研究のIL-6遺伝子多型の組み合わせも含めて、9-10年程度の臨床データがあり長期予後について(HbA1cや糖尿病合併症の進行)の解析も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定より遺伝子解析が若干遅れており、次年度で行う遺伝子解析に必要な経費が生じる。次年度には統計解析に必要なソフトウエアを複数購入する予定である。
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