本研究課題においてパーキンソン病における運動障害の一つであるレボドパ誘発性ジスキネジアのマウスモデルでの評価の為、シヌクレインフィブリル黒質接種モデル(パーキンソン病モデル)での黒質ドパミン神経細胞の変性前の状態、いわゆる前駆期での遺伝子発現解析を行った。シヌクレインフィブリル黒質接種モデルでは接種後6か月で既報通り非常に強い黒質ドパミン神経の変性とレビー病理の形成を確認した。そこでコントロールとしてまずドパミン神経変性前の前駆期でのドパミン神経細胞の状態を評価することとした。まずフィブリル接種6週ではレビー病理が形成されているが、ドパミン神経細胞の変性が起こっていない前駆期の状態であることを病理学的に確認した。そこで黒質のドパミン神経細胞の選択的なRNAseqによる発現解析を前駆期にあたる6週とドパミン神経変性が起こる12週の2群で実施した。その結果、接種6週の時点(ドパミン神経変性前)で多くの遺伝子発現が変動することを確認した。これらのなかでパーキンソン病との関連が指摘されておらず、最も変動の大きい遺伝子Xに関して解析を行った。シヌクレインフィブリル接種によってマウス脳黒質のドパミン神経で発現が誘導されることを確認した。更にPD患者の黒質ドパミン神経での発現上昇も免疫染色法にて初めて確認した。現在、ヒトパーキンソン病患者の生体サンプルでの初期から晩期における発現量変化についての解析を始めた。また、レボドパ誘発性ジスキネジアは運動障害であるため、それらを含めたパーキンソン病モデルでの運動機能の定量的な評価を行うため自由行動下での移動量をトラッキングするシステムの構築を行った。コントロールとしてALSのモデルマウスで従来のロータロッド法よりも詳細な運動障害を検知できた。引き続き、複数の運動障害を呈するモデルマウスを用いて測定を行い最適なプロトコールの作成を行っている。
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