パーキンソン病において進行性のドパミン神経細胞死の病態形成には脳実質外の、特に血管内免疫細胞の関与があるのではないかと考えた。この仮説を検証するためには血管内免疫系細胞と脳内免疫系細胞を識別する必要があり、GFP骨髄キメラ動物が必要と考えた。GFP骨髄キメラ動物はラットを動物種に選び、頭部を保護した上で放射線照射を行いGFP骨髄細胞と脾細胞を移植し作製した。更に、ドパミン神経に選択毒性をもつ6-OHDAを脳内に微量投与した上でGFP骨髄キメラPDモデルラットとした。6-OHDA投与後14日目以降のラットに関しては7日おきに3週間メタンフェタミン誘発旋回運動を120分間測定し1分間あたりの回転数を測定した。6-OHDAを用いてドパミン神経細胞死を誘導した時に、いつ血管内免疫細胞が脳内移行するのか、そして血管内免疫細胞の中でどのサブセットの細胞がMGと相互作用し病態形成を進めるのかを確認するために6-OHDA投与1、2、3、7、14、21、28日後に同モデルラットを灌流固定後、脳を採取した。 6-OHDA投与1週、2週、3週後の1分間あたりの回転数はそれぞれ7.18±1.92、15.16±1.66、15.28±2.07(Mean±SE)であり2週目から全てのラットにおいて7回転以上の回転数を示し、PBS投与ラットと比較して優位な回転数を示した。7日後の病側中脳黒質領域にGFP陽性細胞数の増加を認め、ミクログリア活性化と共にドパミン神経変性に先行している可能性が示唆された。一方で同部位の28日後までの期間においてIba-1陽性のGFP陽性細胞は認めなかったことから、血管内マクロファージからの脳内浸潤が神経変性に影響する可能性は低いと判断した。病側中脳黒質GFP陽性細胞はその形態からリンパ球が推定され、約半数の細胞はCD8が陽性であった。
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