研究課題/領域番号 |
20K07883
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
江川 斉宏 京都大学, 医学研究科, 助教 (20534340)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | レビー小体病 / REM睡眠 / 認知症 / 睡眠覚醒リズム |
研究実績の概要 |
レビー小体病(Lewy body disease: LBD)は、認知症を引き起こすレビー小体型認知症(Dementia with Lewy bodies: DLB)と運動異常を引き起こすパーキンソン病(Parkinson’sdisease: PD)をふくむ神経難病であり、その病理学的な特徴であるレビー小体の主成分はαシヌクレイン(α-Syn)である。多量体α-Synは凝集してfibril(Lewy body)を形成し、時間とともに神経回路を介して中枢神経に伝播することが知られている。認知機能低下/運動症状等の発症期には、すでに中脳黒質ドパミン神経、脳幹部アセチルコリン神経を含む中枢神経細胞死がすでに高度に進行しており、α-Synの凝集と伝播を抑制する早期のα-Syn修飾治療介入が望まれる。我々は、α-Syn凝集体(α-Synpreformed fibrils: mPFFs)をマウス脳内に接種し、その病理進展と睡眠覚醒表現型の関連性を検証し、αシヌクレイン遺伝子SNCA A53T変異トランスジェニックマウスマウス (以下TGマウス)の線条体にマウス由来のmPFFsを投与すると、1ヶ月後に大脳皮質、海馬に伝播した。脳幹部の橋脚被蓋核(PPT)のコリン作動性ニューロンにリン酸化α-Synで染色されるmPFFsが伝播・蓄積し、2ヶ月後にREM睡眠の増加、夜間活動低下とREM睡眠時の筋活動亢進を引き起こすREM睡眠行動異常(RBD)表現型を示すことを明らかにした。(論文投稿中)一方、睡眠異常と睡眠覚醒制御による病理進展制御については、その関連性は示唆されているが、介入実験による検証は十分になされていない。すこで、睡眠覚醒ステージをリアルタイムに記録・判定することで、そのステージに介入するシステムを構築すべく、ウイルスベクターをマウス脳の睡眠覚醒制御部位に感染させて、光遺伝工学的に調整することを検証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は、睡眠覚醒リズム異常とレビー小体型認知症の病態の本質であるαシヌクレインの蓄積との関係性を明らかにするために、マウス睡眠覚醒をリアルタイムに解析するシステムを構築し、その上で、睡眠覚醒制御の方法について検証している。睡眠異常とレビー小体病理進展との関連を検討しており、おおむね順調に進展していると考えられる。研究目的にむけて、睡眠の適切な制御が認知症発症にあたえる影響について検討し、その成果が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
技術的な精度を高めることを通して、実験の再現性と効率性を高めることを目指している。
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