研究課題/領域番号 |
20K07887
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
丸山 博文 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (90304443)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | モデル動物 / オプチニューリン / 筋萎縮性側索硬化症 |
研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症の原因遺伝子であるオプチニューリンをノックアウトしたモデル動物において、機能的及び病理学的影響を評価したところ、オートファジー様空胞形成を伴ったTDP43 (TAR-DNA binding protein 43)病理が出現することを明らかにした。 C57/BL/6マウスにおいてオプチニューリンのエクソン8から10の間をネオマイシンカセットに置き換え、オプチニューリンノックアウトマウスを作成した (CDB0949K)。本モデルマウスでは3ヶ月齢から前角細胞の減少を認め、以後継続的に減少していった。しかし大脳皮質・海馬・視神経には変化を認めなかった。また筋力や行動といった表現型にはwild typeと差を認めなかった。さらにCHMP2B (charged multivesicular body protein 2B)陽性の細胞内空胞が8ヶ月齢以後に増加しており、異常なオートファゴゾームが起こっていることが推測された。本事項についてオプチニューリン遺伝子変異症例について検討したところ、このCHAMP2B陽性の細胞内空胞はQ398Xのホモ接合変異症例の前角細胞でも認めたが、E478Gのヘテロ接合変異症例では認めず、変異による差が確認できた。モデルマウスの腰部脊髄前角細胞を検討すると、8ヶ月齢以降細胞質にTDP43陽性凝集体の出現を認め、14ヶ月齢以降に核からTDP43が消失しp62陽性・ユビキチン陽性の凝集体が増加するようになった。また24ヶ月齢で坐骨神経は大径線維が減少し、小径線維が増加し軸索変性をきたしていた。これらのことはオプチニューリンノックアウトマウスはオートファジー異常が関連した筋萎縮性側索硬化症のモデルマウスとして使用することが可能であることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オプチニューリンをノックアウトしたマウスの機能的・病理学的影響の評価を行うことができた。本マウスの病理学的変化を考慮すると、オートファジー異常が関連した筋萎縮性側索硬化症のモデルマウスとして使用することが可能であることを示している。このことは他のモデルマウスとは異なる発症機序の解析が可能となった点で画期的である。 筋萎縮性側索硬化症の原因遺伝子のダブル操作マウスの飼育も順調で、表現型の観察を継続できている。
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今後の研究の推進方策 |
オプチニューリンノックアウトマウスは筋萎縮性側索硬化症様の病理学的変化をきたすことを明らかにすることができた。しかしながら症候学的に類似の症状をきたすには至っていない。そこでオプチニューリンノックマウスと、それ以外の筋萎縮性側索硬化症の原因遺伝子を操作したモデル動物を掛け合わせ、飼育を継続する。このダブル操作モデルマウスを機能的・病理学的に評価し、症候学的に筋萎縮性側索硬化症をきたすか及び病理学的な変化について検討する。 また細胞系の評価として、筋肉細胞のホメオスターシスでのオプチニューリンの関与を評価する。脱神経操作を加えた筋肉細胞でのオプチニューリンの挙動を評価し、さらに関連したタンパクの変化を検討する。またオプチニューリンの発現を操作した影響について評価を行い、神経筋疾患におけるオプチニューリンの役割を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
520円と少額であり、翌年度の消耗品費として合わせて使用することが適切と考えたため。
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