研究課題
オプチニューリンと筋萎縮性側索硬化症の他の原因遺伝子であるTDP-43 (TAR DNA-binding protein of 43 kDa)遺伝子のダブル操作マウスについて飼育を継続した。体重・握力・ロタロッドテスト・生存期間などの行動学的評価において、TDP-43の影響によりWild typeとは差を認めた。しかし表現型においてオプチニューリン遺伝子ノックアウトとのTDP-43の相乗効果は明らかではなかった。筋細胞から見た評価では、脱神経したマウス筋肉においてオプチニューリンのタンパク質・mRNA発現が増加していた。またその発現は筋線維膜でPax7と共局在し筋芽細胞に存在していた。TWEAK (tumor necrosis factor-like inducer of apoptosis)によるin vitro筋萎縮モデルにおいてオプチニューリンの挙動に変化を認めなかったが、筋原性分化に関与していることが判明した。すなわちC2C12細胞(マウス横紋筋由来)の分化に伴いオプチニューリンmRNAに変化はないものの蛋白の発現は次第に減少し、オプチニューリンをノックダウンすると細胞分化が阻害された。ノックダウンに伴いMyoDやmyogeninといった筋分化調節因子のmRNAは抑制された。これらのことはオプチニューリンは筋の分化に新たな役割を果たしており、神経筋疾患の発症メカニズムに関与していることを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
オプチニューリンをノックアウトしたマウスの機能的・病理学的影響の評価は完了し、オートファジー異常が関連した筋萎縮性側索硬化症のモデルマウスとして使用可能であることを示すことができた。これまでの筋萎縮性側索硬化症のモデルマウスとは異なる機序のモデルである。さらにオプチニューリンとTDP-43遺伝子のダブル操作マウスの飼育はほぼ終了し、Wild typeと比較してTDP-43の影響が認められた。加えてこれらマウスの生体資料の保存がなされており、病理学的・生化学的な解析が可能な状況に到達している。細胞系の評価において筋細胞のホメオスターシスへのオプチニューリンの関与が示された。
飼育が終了したオプチニューリンとTDP-43遺伝子のダブル操作マウスについて、今後は表現型の詳細な検討を行う。また月齢ごとの病理学的・生化学的解析を行い、変化がどの時期からどの程度生じるのか詳細に検討する。評価項目としては運動ニューロンの数、細胞内空胞の有無・分布状況及びその構成成分、細胞内凝集体や軸索変性の有無・分布状況を予定している。オプチニューリンのpathogenic変異と考えられている変異をノックインしたマウスの飼育・評価を行う。
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