研究課題/領域番号 |
20K07888
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
山下 謙一郎 国際医療福祉大学, トランスレーショナルニューロサイエンスリサーチセンター, 准教授 (00596687)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 安静時能的MRI / Resting State Network |
研究実績の概要 |
本研究はDMNとアルツハイマー病(AD)でのAβの凝集好発部位の解剖学的な相同性に基づいて、脳機能的ネットワークの神経活動の過活動が、ADの分子病理学的異常の顕在化に先行し、かつRSN間の機能的結合異常がADの進行を促進するという新規仮説に基づいて研究を実施している。昨年度はさらにADの病態進行による脳萎縮と脳機能的結合変化の関連を検討した。健常高齢者とAD患者においてMRI構造画像と安静時機能的MRI (rs-fMRI)を撮像し、Surface-Based Morphometry (SBM) による脳萎縮部位と脳機能的結合、認知機能検査のMMSEとの関連を比較検討した。健常群と比較したAD群での有意な脳萎縮部位をseedとしてrs-fMRIデータでROI解析を実施し、各群での機能的結合の差異を比較し、またMMSEと脳機能的結合の相関も検討した。SBMではAD群では健常群よりも両側前頭葉、左側頭葉、両側頭頂葉が有意に萎縮していた。AD群での有意な脳萎縮部位のうち左上前頭回をseedとしたROI解析では、AD群では健常群よりも両側海馬傍回との機能的結合が有意に減衰していた。また左上前頭回と両側海馬傍回間の脳機能的結合はMMSEの点数と有意な相関を示した。よってADでは広汎な脳萎縮が生じるが、萎縮部位のうち左上前頭回と両側海馬傍回間の機能的離断が認知機能低下に関連すると考えられた。この結果をまとめ第42回認知症学会学術集会に報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の前半までコロナ禍の影響があり被験者の登録および安静時機能的MRI撮像を実施できる症例が減少している。
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今後の研究の推進方策 |
抗認知症薬に対するAD症例での複数回の安静時機能的MRI撮像による脳機能的ネットワーク変化を検出する研究は、引き続き症例登録を推進していく。また抗認知症薬が有効なAD 症例において脳萎縮の評価が非有効群とのsuraface-baced morphometryによる脳萎縮進行の差と、脳機能的結合の差を比較検討する。健常高齢者とMCI症例でも同様の解析を実施し MRIによる萎縮と脳機能結合の同時計測が診断及び治療のバイオマーカーとなり得るかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響があり安静時機能的MRIデータ収集数が十分でないため、研究期間を延長して登録数を増やす必要があるため。
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