研究課題
ヒトの脳内では、主に活動性の高い神経細胞でアミロイドβタンパク(Aβ)が産生されこれが脳に沈着することで細胞毒性を発揮して神経細胞の細胞死を引き起こし、アルツハイマー病(AD)の原因となる。Aβ40は主に脳血管の基底膜に沈着し、脳出血、脳梗塞、血管炎などを惹起する脳アミロイド血管症(CAA)の原因となる。CAAの病態は、ADの病態と重複している点がある。脳アミロイド血管症周囲での炎症状態も認知機能低下に関与している。我々はバイオ3Dプリンターを用いて、ヒト由来の細胞から成る血管構造体を作成し、血液脳関門の構造・機能を持ったモデルを作成している。ヒト線維芽細胞((NHDFs)、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)、ヒト初代培養アストロサイト(HAs;)、ヒト脳血管ペリサイト細胞(HBVPs)は細胞培養用ディッシュで培養した。96穴プレートに細胞を播種して培養を継続し、バイオ3Dプリンターを用いて、スフェロイドを9x9本の針が並べられた剣山上に配置した。血液脳関門の構造・機能を持った血管構造体を作成するため、以下の3つのアプローチを行った。(1)NHDFsのみからなるスフェロイドを用いて血管構造体を作成し、その内腔にHUVECsを定着させ、外腔にHAsを定着させた。この方法では血液脳関門の構造と機能を持った血管構造体を作成するには不十分である事が示唆された。(2)HUVECs、HBVPs、HAsを混合したスフェロイドを用いて血管構造体を作成した。血管構造体内腔を覆うようにHUVECsが存在しており、HBVPs、HAも構造体内部に存在している事がわかった。(3)HUVECs、HBVPs、Has、NHDFsを混合したスフェロイドを用いて血管構造体を作成した。作成した血管構造体の内腔面を含め、RFP陽性のHUVECで覆われている様子が確認できた。
2: おおむね順調に進展している
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)、ヒト初代培養アストロサイト(HAs;)、ヒト脳血管ペリサイト細胞(HBVPs)の3種類の細胞を混合したスフェロイドを積層し、BBBを持つ血管構造体が作成できるか検討した。構造体の内腔面に血管内皮細胞が局在していること、Pericyteや Astrocyteも生存していることが分かった。さらにヒト線維芽細胞((NHDFs)、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)、ヒト初代培養アストロサイト(HAs;)、ヒト脳血管ペリサイト細胞(HBVPs)の4種類の細胞を混合したスフェロイドを積層し、血液脳関門を持つ血管構造体が作成できるか検討した。血管構造体の内腔面をHUVECsが覆っていることは確認し、構造的には血液脳関門に近似した血管構造体が作成でき、物質透過性の実験を行っている。
4種類(NHDFs/Huvecs-RFP/Pericytes/Astrocytes)の細胞を混合したスフェロイドを積層し、血液脳関門を持つ血管構造体の透過性を検証するために3種類の試薬FITC-IgG、FITC-dextran (MW70kDa)、Evans Blue (MW 960.81) を用いて実験を行う。さらに血管構造体の内腔から外腔へEvans Blueが透過するかどうか実験を行う予定である。さらにAβ40、Aβ42の血管透過性をApoE蛋白(有無と種類)を用いて検証する予定である。
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