抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(MOG)抗体関連疾患(MOG-IgG associated disorders: MOGAD)の全国疫学調査を実施し、MOG蛋白を形質導入したHEK293細胞を生きたまま患者血清と反応させ、標識した2次抗体を用いて免疫染色して同定するcell-based assay(CBA)法によるMOG抗体測定の有用性が明らかとなった。一方でこのCBA法は培養細胞を用いるためキットにすることが難しく、形質導入したHEK293細胞をスライドガラスに固定するfixed-CBA法による感度特異度の検証を進めている。固定法により感度特異度が異なるため、複数の条件による固定を試みている。現在までに実用化に耐えられる固定法は見いだせていない。 MOGADの病態を明らかにする目的で病理学的な解析の報告を行った。診断目的に生検された中枢神経病理標本を用いて免疫染色法にて解析した。病理学的にはMSやNMOとは異なる特徴が認められ、小静脈周囲の細胞浸潤はMOGを貪食するマクロファージの他、CD4陽性のT細胞の浸潤が特徴的であった。そのため、CD4陽性T細胞のMOG反応性が病態に重要な役割を果たすことが示唆された。すなわち、MOGADの発症にはT細胞を含むリンパ球の活性化が重要と考えられたため、患者末梢血中のT細胞のMOG蛋白に対する免疫応答を解析した。MOG全長をカバーする14種類のペプチドに対するT細胞の反応を解析し、特定のペプチドに対する強い免疫応答が認められ、そのペプチドがT細胞の重要なエピトープと考えられた。一昨年度からこのエピトープの病態への関与を解析している。
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