研究課題/領域番号 |
20K07897
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
割田 仁 東北大学, 大学病院, 助教 (30400245)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多系統蛋白質症 / RNA結合蛋白 / hnRNP / 筋萎縮性側索硬化症 / オミックス解析 |
研究実績の概要 |
多系統蛋白質症(multisystem proteinopathy,MSP)は筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis, ALS)/前頭側頭型認知症、封入体ミオパチー(inclusion body myopathy, IBM)、骨Paget病を単独~2,3の組み合わせで呈する成人発症の優性遺伝性疾患である。MSPは国内外で疫学的側面が十分明らかになっていないが、その構成疾患ALSやIBM同様に、診断バイオマーカーがない上に症状改善・進行抑止いずれの治療法もない症候群であり、病態解明と治療法開発が希求されている。 本研究ではMSPとALSにおける細胞選択的な変性メカニズムを解明すべく、自験MSP3原因遺伝子HNRNPA1のユニークな変異に注目し、樹立済みのMSP/ALS患者由来人工多能性(iPS)細胞から分化誘導した、種類の異なる細胞間でオミックス比較解析をおこない、細胞の種類によって脆弱性が異なる分子基盤を解明する。 今年度は既に自ら報告(Neurol Genet, 2015)済みのMSP3型純粋IBMの2家系からp.D314N変異HNRNPA1遺伝子を有する患者1名より樹立済みのiPS細胞より骨格筋細胞を分化誘導し、細胞質内hnRNPA1陽性顆粒形成を主とした細胞表現型の解析を開始した。さらに新規IBM診断症例から2家系の同一HNRNPA1遺伝子変異家系を見出し、そのうち1例から新たなiPS細胞を樹立できた。さらに、ゲノム編集による対照iPS細胞株の作製にとりくんでおり、種々の異なる神経細胞への分化誘導法を確立しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
p.D314N変異HNRNPA1遺伝子を有するMSP3型患者1名より樹立済みのiPS細胞から、骨格筋細胞を分化誘導し、細胞質内hnRNPA1陽性顆粒形成を主とした細胞表現型の解析に着手済みである。さらに同一HNRNPA1遺伝子変異家系を新たに見出し、うち1例からiPS細胞を樹立でき複数ラインでの比較と再現性確認が可能となった。さらに、ゲノム編集による対照iPS細胞株の作製にとりくんでおり、種々の異なる神経細胞への分化誘導法を確立しつつある。 また細胞モデルから得られた知見を検証するためのALSラットモデル系統維持にも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
複数の疾患特異的iPS細胞株、そのゲノム編集正常化対照株、そして健康成人由来対照株の品質管理をおこないつつ、新規MSP家系の集積を継続する。得られたiPS細胞株からは当初の計画通り、選択的変性におちいる細胞群と変性を免れやすい(抵抗性の)細胞群を分化誘導し、単純・共培養系を確立してストレス負荷試験による分子細胞病理の比較解析へと進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の消耗品・試薬で研究実施可能であった.本研究計画に則り2021年度経費として物品費として使用する計画である.
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