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2021 年度 実施状況報告書

末梢神経軸索興奮性、脳機能画像による神経障害性疼痛の病態解明と個別化治療の確立

研究課題

研究課題/領域番号 20K07898
研究機関千葉大学

研究代表者

桑原 聡  千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (70282481)

研究分担者 三澤 園子  千葉大学, 医学部附属病院, 准教授 (30375753)
平野 成樹  千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (60375756)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード神経障害性疼痛 / 軸索興奮性 / 脳機能画像 / 脳血流 / 疼痛評価
研究実績の概要

神経障害性疼痛に対する末梢神経軸索興奮性(Na電流)測定、および脳血流画像に関する当該研究は以下の様に進んでいる。

1.末梢神経軸索Na電流測定:令和2年度までに収集した正常対照10名に加えて令和3年度には10名データを加えて計20名の正常対照群のデータ構築はほぼ終了した。令和3年度には神経障害性疼痛患者17名において記録を行い、疼痛患者における電位変化の傾向を把握した。神経障害性疼痛患者において強さ・時間曲線(strength-duration time constant)により推定される軸索Na電流は、正常対象者と比較して有意に増加しており、末梢感覚神経軸索において興奮性が増大していることを確認する結果を得た。これらの結果は、神経障害性疼痛が末梢神経軸索再生に伴いNaチャネルの発現が増加して感覚神経の自発発射により疼痛が生じるという作業仮説を支持するものであった。

2.脳機能画像による疼痛の客観的評価:令和2年度に施行した神経障害性疼痛患者10名に加えて、令和3年度には8名の糖尿病性神経障害による慢性疼痛患者における脳血流SPECTを用いた脳内の活性化部位を評価し、すでにデータベース化されている正常対照20名のデータとの統計的比較解析を統計ソウトSPM8を用いて行った。慢性疼痛患者において大脳辺縁系の中でも帯状回前部および後部、尾状核において血流が増加しており、患者の自覚的疼痛評価スケールと脳血流変化の程度が相関することを示唆する結果を得た。また一部の慢性疼痛患者では大脳皮質の血流低下が認められ、この所見は疼痛の程度と相関は認められず、疼痛伝達系とは異なった変化をとっていることが明らかとなった。また選択的セロトニンと仕込み阻害薬であるヂュロキセチンの投与により、血流変化が正常化の方向に向かうことを確認した。これらの所見が実際に患者が自覚する疼痛の程度(numerical rating scale:NRS)のスコアと相関するかについて解析中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1.末梢神経軸索Na電流測定:強さ・時間曲線を利用して末梢神経軸索Na電流を評価する測定系を確立し、20名の正常対照における結果を解析し、カットオフ値を設定するに至った。目標とする症例数である神経障害性疼痛患者は30名であったものが、27名までが評価を終了し、末梢神経レベルにおいて神経軸索の興奮性が増大していることを確認する結果を得た。神経障害性疼痛が末梢神経軸索再生に伴いNaチャネルの発現が増加して感覚神経の自発発射により疼痛が生じるという作業仮説を支持するものであったため症例数を増加させるべく務める。

2.脳機能画像による疼痛の客観的評価:脳血流SPECTと解析ソフトSPM8を用いた解析により慢性疼痛と関連する脳内活性化部位の同定とその定量を、17名の神経障害性疼痛患者において行い、目標とした20名に近づいている。疼痛患者では大脳辺縁系の中でも帯状回前部の血流が増加しており、帯状回後部、尾状核でも同様の傾向が認められた。神経障害性疼痛と関連して特定の脳部位が活性化していることを確認した。

今後の研究の推進方策

神経障害性疼痛患者における疼痛の総合的かつ客観的評価法として、(1) 末梢感覚神経軸索Na電流測定、(2)脳血流SPECTによる帯状回、尾状核の血流測定、の二つの方法において評価系の有用性を示すべくより多数の症例においてデータを積み上げる。今後、同一患者においてこれらの手法を用いて疼痛の多面的・客観的評価を行うことに加えて、治療介入後の変化と治療効果の定量が可能な新たな疼痛評価法として発展させるべく、それぞれのパラメーターの相関を解析する。神経障害性疼痛治療の定量的効果判定を行うことにより、個々の患者の病態に応じた個別的・至適治療法の確立を目指す。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染拡大による被検者の来院困難

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公開日: 2022-12-28  

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