研究課題
1.軸索持続性Na電流測定による末梢感覚神経における興奮性増大評価:末梢感覚神経の軸索興奮性の検討は、令和4年度までに前年度分を加えて強さ・時間曲線により推定される軸索持続性Na電流ついて正常対照群50名において各年代・性別における正常値を確立した。糖尿性末梢神経障害、化学療法による薬剤性ニューロパチー末梢神経障害性疼痛患者68名(急性疼痛群20名、慢性疼痛群48名)において同様の評価を行い、疼痛患者において軸索持続性Na電流の解析を行った。その結果、神経障害性疼痛患者にいて持続性Na電流は有意に増大しており、特に急性疼痛群において増加が顕著であった。慢性疼痛群においては持続性Na電流増加の傾向が認められたが、より軽度であり、約40%の患者においてNa電流増加の所見は認められなかった。これらの結果は、神経障害性疼痛の急性期においては初期変化としてNa電流の増加と軸索興奮性増大が疼痛の主因であること、経過中でNa電流増大は徐々に目立たなくなり、中枢性感作が疼痛の主病態となることが推定された。2.脳機能画像による疼痛の客観的評価:令和4年度年度までに神経障害性疼痛患者58名において脳血流SPECTを用いて脳内の活性化部位を評価し、すでにデータベース化されている正常対照のデータと統計的比較解析を行うことにより、慢性疼痛患者において大脳辺縁系の中でも帯状回前部において血流が増加しており、患者の自覚的疼痛評価スケールと血流増加の程度が相関することを見出した。また、20名の患者においてノルアドレナリン・セロトニン取り込み阻害薬による治療後に、この血流変化が正常化の方向に向かうことを示した。2018年に探索的研究の結果として疼痛患者20名患者における結果をもとに公表した結果(Watanabe et al., Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry 2018)を支持する所見であり、現在最終的結果を解析中である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件)
Clinical Neurophysiology
巻: 1 ページ: 308-323
10.1016/j.clinph.2019.07.023
Brain Imaging Behav
巻: 3 ページ: 1337-1348
10.1007/s11682-021-00609-2