研究課題
アルツハイマー病(AD)は認知症でもっとも多い原因疾患であり,脳内のアミロイドβ蛋白とタウ蛋白の蓄積が神経細胞の減少(神経変性)および症状(認知機能低下)をもたらすことが知られている.病理学的検討などから,AD病態機序の進行にフリーラジカル増加による酸化ストレスが関与していることが想定されている.本研究では,AD患者および健常者に対し,64Cu-ATSM(酸化ストレス)・18F-MK6240(タウ)・11C-PiB(アミロイド)によるポジトロンCT(PET)と機能的MRI(萎縮・神経変性)による包括的イメージングを実施し,心理検査(重症度)および電子スピン共鳴装置(ESR)による血清中の各種フリーラジカル測定との相関や,患者群と健常者群の間での比較を検討する.これらの検討によって,酸化ストレスのAD病態,特にタウ病変の進展への関与を明らかにすることを目的としている.最終年度である本年度では,当初の研究計画に沿って,AD患者群および健常者群に対し,64Cu-ATSM(酸化ストレス)および11C-PiB(アミロイド)によるPET撮影,詳細な心理検査による評価を実施した.また,倫理審査委員会の承認を受け,18F-MK6240によるタウPET検査を開始し,脳内タウ蓄積の評価が可能となった.さらに,患者脳内における64Cu-ATSMの集積に対し動態解析を行い,より正確な酸化ストレスの評価法を確立し,早期AD患者における海馬や後部帯状回での有意な酸化ストレスの増加を明らかにした.本研究によって,酸化ストレスとタウを中心としたAD病態の包括的な可視化という新たな評価法を確立することができた.さらに今後,この成果によって,ADにおけるタウ病変・病態進展の“加速因子”としての酸化ストレスの役割の解明につながることが期待できる.
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