研究課題/領域番号 |
20K07901
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(静岡・てんかん神経医療センター臨床研究部) |
研究代表者 |
寺田 達弘 独立行政法人国立病院機構(静岡・てんかん神経医療センター臨床研究部), その他部局等, その他 (80550178)
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研究分担者 |
横倉 正倫 浜松医科大学, 医学部, 助教 (00529399)
小尾 智一 独立行政法人国立病院機構(静岡・てんかん神経医療センター臨床研究部), その他部局等, その他 (10393117)
武内 智康 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 特任助教 (20754188)
尾内 康臣 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 教授 (40436978)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | レビー小体型認知症 / PET / ミトコンドリア / 神経炎症 |
研究実績の概要 |
レビー小体型認知症(DLB)は、本邦で著しく増加しつつある三大認知症の一つであり、アルツハイマー病(AD)についで多い認知症疾患である。DLBはADと比べ、各種認知機能障害に加え、幻覚や妄想など心理行動障害、さらには、パーキンソン症状や転倒などの運動障害をきたすため、日常生活制限の度合いが大きく、介護量の増加が社会に与える影響は大きい。DLBの主要病理は、αシヌクレイン蛋白を主要構成成分とするレビー小体の蓄積を特徴とするが、その神経細胞死にはミトコンドリア障害、酸化ストレスや神経炎症などが関与することが明らかとなってきている。しかし、生体脳におけるミトコンドリア機能とDLB病態に関しては不明な点が多い。[18F]BCPP-EFは、ミトコンドリア電子伝達系酵素複合体1(MC-1)に結合するため、ミトコンドリア機能を特異的に可視化できる新規PETトレーサーである。DLBにおける病態意義を明らかにするため、[18F]BCPP-EFによる脳内ミトコンドリアイメージングを行い、ミトコンドリア機能障害の早期の分布と程度を明らかにする。さらに、[11C]PBB3(タウ病理)、[11C]DPA-PET(神経炎症)、髄液サイトカイン測定を行い、ミトコンドリア機能と神経炎症、タウ、脳萎縮、認知機能との関連を検討し、DLBの病態解明を行う。 解析方法の確立、[18F]BCPP-PETおよび神経炎症評価のための[11C]DPA-PET、タウ病理評価の[18F]PMPBB3の健常者のPET撮像を完了し、データベースを作成した。また、健常群の頭部MRIデータベースの作成をはほぼ完了しており、データベースの作成を行う予定である。今後、DLB症例のPET撮像を継続し、ミトコンドリア機能の低下と各種バイオマーカーとの関連を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DLB症例のリクルートとPET撮像、臨床評価を継続している。また、健常群の[18F]BCPP-PET、[11C]DPA-PET、[18F]PMPBB3の撮像は完了している。PET画像の解析方法については、1、standardized uptake value ratio(SUVR)法およびBinding Potential(BPND)の推定方法を確立した。2、統計画像解析法に関しては、解析方法(ボクセル設定、分割化、標準化、平滑化)の精度向上のため、SPM8から12への変更を行った。3、関心領域法ROIによる解析では、これまでのmanual ROI法(手動でのROI設定)では、検者によるバイアスがかかるため、auto-ROI法(標準脳上の脳回のROIを設定)することで、客観的なROI法を確立した。4、カナダのマギル大学との国際共同研究にて導入可能となった、画像間の相関解析を視覚的に表示することができるVoxelstatsソフトウェアおよびそのデータ解析ソフトminktoolkitを用いた画像解析方法を確立した。1-4に関しては、学会および論文発表を行い、その信頼性妥当性の評価を得た(日本神経学会、ブレインマッピング学会、Mol Neurodegener. 2021、Frontiers in Neurology.2022)。一方で、認知機能障害の評価精度向上のため、高次脳機能障害外来および検査の充実化を行った。 以上より、2年目の進捗状況はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、DLB症例の臨床評価、PET撮像を行い、今年度中に完了させ、PET画像作成を完了させる。また、頭部MRIの正常データベースの作成を完了させる。そして、同時に、髄液サイトカイン、アポEの測定を終了させる。 再度コロナウィルスの蔓延により、認知症患者数が全般的に減ってきている。そのため、認知症診療体制の充実化を行う。具体的には、被験者の負担軽減のため、PET撮像のスケジュール調整、高次機能障害外来の設立と神経心理士の配置により認知機能評価の底上げをはかる。 得られたPETデータおよび臨床データを解析し、初期データの情報発信を行う。研究成果は、来年度の日本神経学会、日本神経科学会、日本脳循環代謝学会、核医学学会、認知症学会にて発表予定である。さらに、ミトコンドリア機能障害とDLB病理との直接相関を評価し、各バイオマーカー間、臨床症状との関連などの下位解析を行うとともに、英雑誌に投稿予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID感染症蔓延のため、各学会・研究発表会・国際学会、そして、研究協力会議の開催が延期もしくは中止となり、当初予定していた旅費に差額が生じている。しかし、今年度より学会活動が再開され、また渡航規定も緩和されてきており、国際学会も開始予定となっており、今年度未発表であった研究成果の発表の機会が得られる予定であり、おおむね予 定通りの運用となる見込みである。
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