研究課題/領域番号 |
20K07909
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
上野 祐司 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00349002)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脳虚血 / エクソソーム / 細胞外膜小胞 / マイクログリア / アストロサイト / 軸索再生 |
研究実績の概要 |
脳梗塞モデルラットにおけるP2Y1受容体拮抗薬がperi-infarct areaにおけるグリア瘢痕および脳梗塞慢性期の神経徴候に及ぼす影響を解析した。中大脳動脈閉塞(MCAO)後7日から21日において、浸透圧ミニポンプ(Alzet Corporation)を使用してラット脳peri-infarct areaにP2Y1受容体拮抗薬を投与した。Vehicle群、1、10 nMのP2Y1受容体拮抗薬投与の間では、生存率に有意差は見られなかった。また、3群間においてもmodified Neurological Severity Score(mNSS)による神経徴候で有意差は認めなかった。一方で、培養アストロサイトで虚血負荷(OGD)後アストロサイト培地、OGD後にP2Y1受容体阻害薬とマイクログリア培地を投与したアストロサイト培地由来のエクソソームを抽出し、脳梗塞ラットへ投与した。Vehicle群と併せて3群間では死亡率に変化は無かった。P2Y1受容体阻害薬とマイクログリア培地の併用したアストロサイト由来のエクソソームは脳梗塞後慢性期(56日目)におけるmNSSとロタロッドにおける運動機能を改善させた。MCAO後56日目の脳組織において活性化アストロサイトのマーカーであるGFAPの発現が減少し、軸索が増生していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養アストロサイトにおいて、虚血負荷(OGD)後にP2Y1受容体拮抗薬を投与することでA1型のマーカーであるC3dの発現減少、P2Y1受容体拮抗薬とマイクログリア培地併用治療によりC3dの発現減少に加えてA2型のマーカーであるS100A10の増加を前年度確認した。これらの条件で培養アストロサイトから放出されるエクソソームを回収し、脳梗塞ラットへ同種他家投与する事で脳梗塞ラットの慢性期機能回復促進現象を認めた。一方で、脳梗塞ラットへP2Y1受容体拮抗薬単独投与では、明らかな神経徴候の改善は認めなかった。A1型減少、A2型増加したアストロサイト由来のエクソソームの脳梗塞慢性期機能回復効果を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
P2Y1受容体拮抗薬、エクソソームを投与したラット脳切片に免疫組織染色を行い、組織学的な解析を進める。脳梗塞後機能回復をきたす組織変化を同定する。 エクソソームのmicroRNAに関して、網羅的解析やIPA解析によりA1型減少、A2型増加したアストロサイト由来のエクソソームの全貌を明らかにしたい。
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