研究課題
VPS13Cは遺伝性潜性パーキンソン病原因遺伝子である。我々は、その原因遺伝子産物の機能解析からパーキンソン病発症機序の解明を目指している。本年度はショウジョウバエ(以下、ハエ)を用いて、VPS13の生理的機能における解析とVPS13と既知パーキンソン病原因遺伝子間の遺伝的相互作用スクリーニングを行った。生理的機能解析では、内在性VPS13が、エンドサイトーシス活性が高い心膜腎細胞に発現していることを見いだした。それ故、VPS13ノックアウト(KO)成虫の心膜腎細胞における微細構造を電子顕微鏡で観察した。その結果、心膜腎細胞が有するα小胞数に変化はないものの、VPS13KOでは野生型と比較して小胞サイズが拡大していた。前年度までに、VPS13 KOにおいてシナプス小胞の肥大化を見いだしていることから、VPS13は小胞膜サイズを制御している可能性が示唆された。遺伝的相互作用スクリーニングに関しては、まずパーキンソン病発症に関与するαシヌクレインの凝集化へのVPS13の関与の有無を検討した結果、優位な影響は検出できなかった。さらに既知パーキンソン病原因遺伝子間の遺伝的相互作用の検討結果、脂質修飾に関与する遺伝子を同定した(未発表のため、名称は伏せる)。本パーキンソン病遺伝子を全身、または神経特異的でノックダウンすると致死になるが、VPS13 KOバックグランドハエにおいては、全身・神経特異的ノックダウンのいずれも羽化した。VPS13は脂質輸送に関与することが報告されているので、同様の分子経路で機能している可能性が考えられた。今後、培養細胞を用い、両遺伝子の分子相互作用について解析を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
ショウジョウバエを用いて、VPS13Cの生理学的役割について一部明らかにできた。また、遺伝学的相互作用する新規分子の同定と、VPS13とαシヌクレインとの関与についても明らかにできた。今後、両分子間の分子機構の解析を進める予定であるが、KO培養細胞の樹立やベクターなどのマテリアルの準備も完了している。
今後、VPS13とスクリーニングで同定した既知パーキンソン病原因遺伝子との分子相互作用について解析を進める予定である。まず、VPS13KOで表現型が得られているハエ心膜腎細胞において、既知パーキンソン病原因遺伝子がどのように修飾するのかを検討する。また、培養細胞を用いて両遺伝子の局在や、VPS13Cが局在するリソソームへの影響なども合わせて確認する予定である。
ハエVPS13と遺伝学的相互作用する既知パーキンソン病原因遺伝子産物の解析を来年度に行うことにしたため、次年度に予算を繰り越した。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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