研究課題/領域番号 |
20K07914
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
松澤 大輔 千葉大学, 子どものこころの発達教育研究センター, 特任准教授 (10447302)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 経頭蓋直流電気刺激 / tDCS / 注意欠如多動症 / ADHD |
研究実績の概要 |
注意欠如・多動症(以下ADHD)はワーキングメモリ(作業記憶、以下WM)の障害が大きい。WMは認知的課題の遂行中に一時的に情報を課題終了まで保持する能力である。日常生活で広く情報処理や複数課題の同時遂行に関わり、低能力は生活の質に直結する。ADHDでは薬が有効だが、一方で不耐性や拒絶感から服薬困難患者も多く存在する。従って、ADHD治療を薬物以外に考えられれば有益な選択肢となりうる。本研究代表者はその1手段として経頭蓋直流電気刺激(以下tDCS)を以前より考え、WM向上を健常者で確認し(Naka et al., 2018)、さらに令和元年9月からは健常者に加え、ADHD患者を含めWMのそもそも低い被検者に対するtDCSの効果を検証する準備をし、千葉大学医学部の倫理委員会の承認を既に得ている。tDCSは頭皮を通して大脳皮質に加える微弱電流が神経可塑性を誘導し、脳活動の増強が可能な非侵襲的装置である。本研究では単回使用でADHDに対してのtDCS効果を実証し、その後複数回使用を患者自宅で研究者の指導の元に行って、より高い治療効果を望むことを目的としているが、本年度はADHDに対してのtDCSがワーキングメモリ向上に寄与できるかを検証した。ワーキングメモリ課題としては3-backの読み課題(Visual working memory:VWM)と聴く課題(Auditory working memory:AWD)を用い、それと持続的注意課題を組み合わせた。tDCSは1.5mAの強度で15分とし、被検者の左背外側前頭前野に陽極刺激を行った。結果として、全体としてはtDCSとsham刺激で差が無かったが、ADHD患者において、視覚的な3-back課題の成績がtDCSによって改善し、tDCSによる不快感・集中困難な自覚症状も改善する可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初計画では令和2年度中に次の段階である「遠隔指導によるtDCS持続的効果の検証」に入る予定であったが、令和2年度~令和3年度は新型コロナウイルス感染症の蔓延とそれによる緊急事態宣言やまん延防止等重点措置及び勤務制限などが重なり、令和3年度修了までに、第1期の研究修了と論文執筆が終わるにとどまった。残る期間で第2期を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在第1期の実験であるADHD患者も対象にしたtDCS実験を遂行し、論文をまとめたところである。 第2期は今年度中に速やかに開始する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は新型コロナウイルスの蔓延の影響があり、学会出張が予定どおりには出来ず、また論文発表が遅れており、予定していた学会発表のための出張費、論文関連出費、及び解析に必要なPCの購入が年度内に間に合わなかったこともあった。来年度はそれぞれの出費がある予定である。
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