研究課題
軽度認知障害および認知症の外来受診症例連続例170例(平均年齢80.1±7.5歳)について、1.5TMRI、FLAIR画像を用いて、海馬領域の高信号を海馬硬化ありの指標としてその頻度と背景因子について検討した。海馬硬化ありは70例、41%に認められ一般に考えられているよりも高い頻度であった。これは、米国の地域住民のコホート剖検研究におけるLATE病理の頻度である52%に近いものであり、剖検例はより進行した最終段階であることを考えると臨床例における海馬硬化の頻度として妥当なものと考えられた。海馬硬化有り(HS+)群と無し(HS-)の2群間比較では、年齢および教育年数には差が無く、罹病期間ではややHS+群で罹病期間が長く、MMSEではHS+群でやや低くかった。NPIによる精神症状では、HS+群で精神症状が強かった。臨床診断では、軽度認知障害、アルツハイマー型認知症がHS(+)群でより少なく、レビー小体型認知症、血管性認知症では同等、嗜銀顆粒性認知症疑いがHS(+)群のみでみられた。VSRADの側頭葉内側部の指標であるZスコアでは、HS+群では有意に高値で萎縮が強かった。脳血流99mTc-ECDを用いた脳血流SPECTでのアルツハイマー型認知症低下部位の指標のSVAでは差が無かった。アポリポ蛋白E多型のε4を有する割合は、HS+群で2倍高かった。以上の結果から、海馬硬化を指標としてLATEを臨床的に予測することができる可能性があり、前部内側側頭部萎縮を特徴とする嗜銀顆粒性認知症と共通する病態としてLATEを捉えることができると考えられた。また、病理学的検討症例でもLATE病理の5症例中4症例に嗜銀顆粒病理も認められており、両者の病理は併存しやすく前部内側側頭部が共通して侵されやすい病変部位として重要であると思われた。
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