研究課題/領域番号 |
20K07925
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
有銘 預世布 獨協医科大学, 医学部, 講師 (80609404)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 動物モデル / ワーキングメモリー / 抗精神病薬 |
研究実績の概要 |
ワーキングメモリーなどの認知機能障害は統合失調症の中核症状と考えられており、機能的転帰に直結することが知られている。しかしながら、現存する抗精神病薬にはこの認知機能障害にはあまり効果がなく、神経回路病態も不明である。そこで、本研究は統合失調症モデルマウスを用いて、ワーキングメモリー障害の原因神経回路と改善手法を探索することを目的としている。 これまでに、統合失調症の薬理学的モデルであるフェンサイクリジン(PCP)を慢性投与したマウス(PCP慢性投与マウス)が示すワーキングメモリー障害は、マウスにおいて臨床における用量を反映した抗精神病薬の慢性投与でも改善せず、前辺縁皮質における興奮性/抑制性神経の解剖学的バランス異常を見出した。2年目である本年度は、パルブアルブミン(PV)陽性の抑制性神経細胞に特異的にCreリコンビナーゼを発現する(PV-Cre)マウスにPCPを慢性投与して作成したモデルマウスの内側前頭前野にCre依存的にhM3D(Gq)を発現させるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを投与した。hM3D(Gq)に特異的なリガンドであるデスクロロクロザピンを用いた化学遺伝学的手法(DREADD)で摂動を与えることによって、PCP慢性投与マウスにおいて低下している正答率を改善させることができた。しかも、このワーキングメモリー改善作用は臨床用量を反映した抗精神病薬の慢性投与と併用下でも発揮されていた。これらの結果は、同領域におけるPV陽性の抑制性神経細胞の活動調節がワーキングメモリー障害の改善に十分であり、抗精神病薬の慢性投与によっても阻害されないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、臨床用量を反映した抗精神病薬慢性投与によっても改善しないPCP慢性投与マウスのワーキングメモリー障害を改善する手法を見出すに至った。かつ、この改善手法は臨床用量を反映した抗精神病薬併用下でも発揮されていることを見出した。さらに、次年度の研究を進捗させるために、in vivoで神経活動を測定する準備にも取り組んでいる。以上より、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、蛍光カルシウムセンサータンパク質や膜電位センサータンパク質を用いたin vivoイメージング法によるワーキングメモリー障害責任領域候補における神経回路活動を解析することによって、この改善作用の神経メカニズムの解明を試みる。また、ワーキングメモリー以外の認知機能障害への効果を検証するため、行動実験系の構築を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)高額なPCPを追加で海外から購入するのに半年ほどの納期を要するため、次年度使用額が生じた。 (使用計画)2022年度には、イメージング関連の物品に加えて、研究の進展に合わせて新たな行動実験系の構築にも予算を充てる予定である。
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