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2022 年度 実施状況報告書

シンタキシン1欠損マウスにおける精神神経疾患症状に対するグリア細胞の役割

研究課題

研究課題/領域番号 20K07926
研究機関杏林大学

研究代表者

小藤 剛史  杏林大学, 医学部, 助教 (40365200)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードシンタキシン1 / グリア細胞 / 神経伝達物質 / 抑制性シナプス
研究実績の概要

シンタキシン1(STX1)は神経細胞に豊富に発現しており、神経伝達物質の分泌やそれらの輸送体の活性制御に関わっている。我々が作製したSTX1遺伝子欠損マウスはヒトの精神神経疾患を模擬できる様々な行動異常を示すが、これには神経細胞でのSTX1欠損によるシナプス伝達機能の異常が大きく関与している。一方、STX1がグリア細胞にも発現していることから、マウスの行動異常にはグリア細胞でのSTX1欠損が関与している可能性がある。これまでに、STX1欠損グリア細胞において神経伝達物質であるGABAやグリシンの取込異常があることがわかってきた。しかし、グリア細胞のSTX1が神経細胞のシナプス形成やシナプス伝達機能にどのように関わっているかは十分に検討されていない。
グリア細胞のSTX1が神経細胞の形態やシナプス形成に関与しているかを検討するために、各遺伝子型グリア細胞(野生型(WT)およびSTX1A欠損、STX1B欠損)上でWT神経細胞を培養した。培養16日目以内では主要な神経突起数やシナプトフィジンの斑文数においてSTX1欠損による影響は認められなかった。また、電気生理学的解析で抑制性シナプス伝達機能を検討したところ、mIPSCの振幅や頻度に差は認められなかった。しかし、20日以上の長期培養では、WTグリア細胞上で培養したWT神経細胞の方が、STX1B欠損グリア細胞上で培養したWT神経細胞よりもmIPSCの頻度が高いことがわかった。STX1Bヘテロ欠損神経細胞について検討したところ、WT神経細胞の時と同じくグリア細胞でのSTX1B欠損が抑制性シナプス機能に影響することがわかった。しかし、WT、STX1Bヘテロ欠損神経細胞の形態やシナプス形成に差はなかった。そこで、抑制性シナプス形成を詳細に検討するとともに、in vivo用の強制発現系を用いて、熱性けいれんやけいれん感受性等の解析を行う。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

昨年度に引き続き、長期培養条件下での検討を進めているが、1回の実験期間が長くなったことおよび培養トラブル等もあり、例数確保に時間を要している。神経細胞の形態やシナプス形成に関して例数を増やして検討を進めたが、顕著な差は認められなかった。また、電気生理学的解析を継続して行い、長期培養下で各遺伝子型グリア細胞による抑制性シナプス伝達機能への差が認められることが明らかになった。グリア細胞でのSTX1欠損によって抑制性シナプスの成熟が影響されていると考えられ、神経細胞への形態やシナプス形成について抑制性と興奮性を弁別した解析を進めている。また、ポストシナプスマーカーでの確認や切片レベルでの解析を検討している。さらに、STX1B欠損(ヘテロおよびヌル)神経細胞を用いて形態やシナプス形成の検討および電気生理学的解析も行い、正常神経細胞と同じくグリア細胞でのSTX1欠損が抑制性シナプス伝達機能に影響することが明らかになった。STX1B有無によるグリア細胞―神経細胞の培養を組み合わせて更に検討を進めている。また、in vivoでの検討のために、グリア細胞または神経細胞特異的なSTX1B強制発現系を構築した。培養細胞での発現は確認できたが、in vivoでの最適条件が十分でなく、さらに検討を進めている。この発現系を用いて、コントロール群での確認ができている熱性けいれんやけいれん感受性等への解析に使用する予定である。

今後の研究の推進方策

次年度以降の研究計画として、長期培養条件下においてSTX1欠損による神経細胞の形態やシナプス形成への影響について、抑制性と興奮性の弁別した解析を引き続き行う。また、電気生理学的解析に関しては、当初の予定通りGABA再取込の阻害やSTX1強制発現等による効果に加えて、抑制性シナプス伝達機能の成熟に影響すると考えられる因子の添加による改善効果を検討する。また、同条件での神経細胞形態およびシナプス形成を解析する。さらに、in vivo用に構築した強制発現系を用いて、STX1欠損マウスで見られる熱性けいれん、けいれん感受性増強等へのグリア細胞のSTX1の効果を検討する予定である。

次年度使用額が生じた理由

今年度は計画していた実験がやや遅れた。これは、当初計画より長期での培養条件下での実験が主流となったこと、培養トラブルが起こったこと等による。本年度が最終年度であったため、期間の延長により、遅れた分の実験計画および使用予定であった費用を使用する予定である。
次年度では、継続して行う細胞培養および電気生理学的解析、組織化学的、生化学的解析のために必要な実験器具や試薬購入にあてる。また、in vivoでの強制発現系の有効条件の決定および同条件での熱性けいれんやけいれん感受性等への検討を行うために使用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] グリア細胞におけるシンタキシン1B欠損はGABA放出の異常を引き起こす2022

    • 著者名/発表者名
      小藤剛史,三嶋竜弥,齋藤綾子,藤原智徳
    • 学会等名
      Neuro2022
  • [学会発表] シンタキシン1Bのハプロ不全による熱性けいれんの発症機序の解明2022

    • 著者名/発表者名
      三嶋竜弥,小藤剛史,藤原智徳,齋藤綾子,寺尾安生
    • 学会等名
      Neuro2022

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公開日: 2023-12-25  

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