研究課題/領域番号 |
20K07926
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
小藤 剛史 杏林大学, 医学部, 助教 (40365200)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | シンタキシン1 / グリア細胞 / 神経伝達物質 / 抑制性シナプス |
研究実績の概要 |
シンタキシン1(STX1)は神経細胞における神経伝達物質の分泌やその輸送体の活性等を制御している。我々が作製したSTX1遺伝子欠損マウスはヒトの精神神経疾患を模擬できる様々な行動異常を示すが、これには神経細胞でのSTX1欠損によるシナプス伝達機能の異常が大きく関与している。一方、STX1はグリア細胞にも発現しており、マウスの行動異常にはグリア細胞でのSTX1欠損が関与している可能性がある。STX1欠損グリア細胞では神経細胞の生存に関わるBDNFの放出異常や神経伝達物質であるGABAやグリシンの取込異常が認められる。しかし、グリア細胞のSTX1が神経細胞のシナプス形成やシナプス伝達機能にどのように関わっているかは十分に検討されていない。 各遺伝子型グリア細胞(野生型(WT)、STX1B欠損)上でWT神経細胞を培養し、グリア細胞のSTX1Bが神経細胞の形態やシナプス形成に関与しているかを検討した。培養16日目以内では主要な神経突起数やシナプトフィジンの斑文数においてSTX1B欠損による影響は認められなかった。また、電気生理学的解析で検討した抑制性シナプス伝達機能にも差はなかった。しかし、20日以上の長期培養ではWT神経細胞/WTグリア細胞と比べてWT神経細胞/STX1B欠損グリア細胞の神経細胞においてmIPSCの頻度が低下していた。STX1Bヘテロ欠損神経細胞を用いて各遺伝子型グリア細胞の影響を検討したところ、同様にグリア細胞でのSTX1B欠損が抑制性シナプス機能を低下させていた。そこで、VGATの斑文数により抑制性シナプス形成を検討したところ、長期培養におけるSTX1B欠損条件下で抑制性シナプス数が減少していた。さらに、in vivo強制発現系を用いてSTX1B欠損マウスの幼若期で見られる熱性けいれんの温度感受性や薬剤誘発けいれん感受性へのグリア細胞の関与について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、長期培養条件下での検討を進めた。神経細胞の形態やシナプス形成に関して、顕著な差は認められなかった。また、電気生理学的解析を行い、長期培養下で各遺伝子型グリア細胞による抑制性シナプス伝達機能への差があることが明らかになった。グリア細胞でのSTX1B欠損によって抑制性シナプスの成熟が影響されていると考えられ、神経細胞への形態やシナプス形成について抑制性神経細胞と興奮性神経細胞を弁別して解析した。その結果、グリア細胞でのSTX1B欠損により抑制性シナプス数が低下することがわかった。この低下に関与する因子が何かを検討している。また、ポストシナプスマーカーでの確認や切片レベルでの解析を行っている。さらに、STX1B欠損(ヘテロおよびヌル)神経細胞を用いて形態やシナプス形成の検討および電気生理学的解析も行い、正常神経細胞と同じくグリア細胞でのSTX1欠損が抑制性シナプス伝達機能に影響することが明らかになった。STX1B有無によるグリア細胞―神経細胞の培養を組み合わせて更に検討を進めている。また、グリア細胞または神経細胞特異的なin vivo STX1B強制発現系を用いて幼若期における熱性けいれんへのグリア細胞のSTX1Bの関与を検討した。また、同じ発現系を用いて、薬剤誘発けいれん感受性への解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降の研究計画として、長期培養条件下で明らかとなったSTX1B欠損による抑制性シナプス形成への影響について、幼若期熱性けいれんとの関連を探るため、切片レベルでの解析を引き続き行う。また、電気生理学的解析に関しては、当初の予定通りGABA再取込の阻害やSTX1強制発現等による効果に加えて、抑制性シナプス伝達機能の成熟に影響すると考えられる因子の添加による改善効果を検討する。また、同条件での神経細胞形態およびシナプス形成を解析する。さらに、in vivo STX1B強制発現系を用いて、STX1欠損マウスで見られる熱性けいれん、薬剤誘発けいれん感受性へのグリア細胞のSTX1Bの効果を引き続き検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は計画していた実験がおおむね順調に進んだ。しかし、前々年度、前年度の実験計画の遅れがあったため、期間の再延長を行った。次年度では、継続して行う細胞培養および電気生理学的解析、組織化学的、生化学的解析のために必要な実験器具や試薬の購入にあてる。また、in vivo強制発現系での熱性けいれんや薬剤誘発けいれん感受性への検討を行うために使用する予定である。
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