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2020 年度 実施状況報告書

新規遺伝子発現調節メカニズムLDB2-EGR/ARC系と精神疾患

研究課題

研究課題/領域番号 20K07934
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

大西 哲生  国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 副チームリーダー (80373281)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード統合失調症 / ノックアウトマウス / 均衡型染色体転座
研究実績の概要

LDB2-EGR間のmissing linkの解明についても積極的に解析を進めたが、現在のところその同定には至っていない。具体的にはLDB2を通常の方法て免疫沈降(マウス脳lysateなどを利用)しその共免疫沈降物の中にEGR1,2,3が検出できるかどうかを検討したが今までのとこを成功していない。その原因は恐らくLDB2-EGR複合体の生化学的安定性がそこまで高くない、あるいはLDB2特異抗体による免疫沈降効率が不自由分であるといった複合的な理由があるのではないかと解釈している。並行して、本研究年度は、今まで未発表であった研究成果の取りまとめ作業、リバイス実験を行った。その結果二本の論文(Horiuchi Y et al. 2020; Ohnishi et al. 2021)に採択され、掲載に至った。特に後者に関しては理化学研究所からプレスリリースを行い、多くのメディアで取り上げられた。その内容には、当該患者の均衡型染色体転座の転座点を塩基レベルでの確定、LDB2がシナプス機能の調節を介して精神疾患の発症に関与している可能性、シナプス機能調節因子であるARCがその標的であること、LDB2はゲノム上で10000箇所以上に結合すること、すでに我々が統合失調症との関連を証明していたEGRタンパク質と協調して遺伝子発現を調節うることなど、いずれもそれまで全く不明であった点を明らかにしたものであり、極めて重要な研究成果である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究成果の一部を以下の論文にまとめられたため。
1. Horiuchi Y, Ichikawa Ohnishi et al.: LDB2 locus disruption on 4p16.1 as a risk factor for schizophrenia and bipolar disorder, Hum. Genome Var. 7, Article number: 31, 2020
2. Ohnishi T et al.: Cooperation of LIM domain-binding 2 (LDB2) with EGR in the pathogenesis of schizophrenia, EMBO Molecular Medicine, e12574, 2021
またLDB2とEGRタンパク質の相互作用は極めて不安定で通常の免疫沈降法などでは捉えることが相当困難であることが判明するなど、その生化学的性状について理解が進んだため。

今後の研究の推進方策

今年度に関しては近接ビオチンラベル化法、特異的抗体を用いたマウス脳からのLDB2複合体精製、マウスのLdb2遺伝子のま石コドン下流に精製に使えるタグを導入するなどの方法を用いてLDB2-EGR複合体の生化学的性状解析を強力に推進する。この解析によってEGR-LDB2間のmissing linkの同定を目指す。同時にARC遺伝子の発現調節をモデルとして、EGRメンバー、LDB2の機能を詳細に検討する。その目的でLDB2の野生型、双極性障害で見出した点変異体、EGR1-4の発現コンストラクトを作成する。ARC遺伝子の下流にレーポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を導入したコンストラクトも準備し、デュアルルシフェラーゼアッセイにより、EGR発現の効果、LDB2発現の効果、LDB2変異の効果、LDB2-EGR間のmissing linkの実体(何らかの転写調節因子を想定している)の効果を検証する。missing linkが判明した場合には、その遺伝子におけるレアバリアントを統合失調症、双極性障害サンプルから探索し、将来のノックインマウスなどを用いた解析の基盤とする。

次年度使用額が生じた理由

主に論文の出版作業を行ったため、当初の実験予定の一部を次年度に繰り越したことによる。2022年度に主に実験用消耗品の購入予定に当てる予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Cooperation of LIM domain-binding 2 (LDB2) with EGR in the pathogenesis of schizophrenia2021

    • 著者名/発表者名
      Ohnishi et al.
    • 雑誌名

      EMBO Molecular Medicine

      巻: 13 ページ: e12574

    • DOI

      10.15252/emmm.202012574

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] LDB2 locus disruption on 4p16.1 as a risk factor for schizophrenia and bipolar disorder2020

    • 著者名/発表者名
      Horiuchi, Ichikawa, Ohnishi et al.
    • 雑誌名

      Human Genome Variation

      巻: 7 ページ: 31

    • DOI

      10.1038/s41439-020-00117-7

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Peroxisome proliferator-activated receptor α as a novel therapeutic target for schizophrenia2020

    • 著者名/発表者名
      Wada, Maekawa, Ohnishi et al.
    • 雑誌名

      EBioMedicine

      巻: 62 ページ: 103130

    • DOI

      10.1016/j.ebiom.2020.103130

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [備考] 精神疾患に関与する新しい遺伝子発現調節系の発見

    • URL

      https://www.riken.jp/press/2021/20210303_2/index.html

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公開日: 2021-12-27  

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