研究実績の概要 |
LDB2-EGR間のmissing linkの解明についても積極的に解析を進めたが、現在のところその同定には至っていない。具体的にはLDB2を通常の方法て免疫沈降(マウス脳lysateなどを利用)しその共免疫沈降物の中にEGR1,2,3が検出できるかどうかを検討したが今までのとこを成功していない。その原因は恐らくLDB2-EGR複合体の生化学的安定性がそこまで高くない、あるいはLDB2特異抗体による免疫沈降効率が不自由分であるといった複合的な理由があるのではないかと解釈している。並行して、本研究年度は、今まで未発表であった研究成果の取りまとめ作業、リバイス実験を行った。その結果二本の論文(Horiuchi Y et al. 2020; Ohnishi et al. 2021)に採択され、掲載に至った。特に後者に関しては理化学研究所からプレスリリースを行い、多くのメディアで取り上げられた。その内容には、当該患者の均衡型染色体転座の転座点を塩基レベルでの確定、LDB2がシナプス機能の調節を介して精神疾患の発症に関与している可能性、シナプス機能調節因子であるARCがその標的であること、LDB2はゲノム上で10000箇所以上に結合すること、すでに我々が統合失調症との関連を証明していたEGRタンパク質と協調して遺伝子発現を調節うることなど、いずれもそれまで全く不明であった点を明らかにしたものであり、極めて重要な研究成果である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究成果の一部を以下の論文にまとめられたため。 1. Horiuchi Y, Ichikawa Ohnishi et al.: LDB2 locus disruption on 4p16.1 as a risk factor for schizophrenia and bipolar disorder, Hum. Genome Var. 7, Article number: 31, 2020 2. Ohnishi T et al.: Cooperation of LIM domain-binding 2 (LDB2) with EGR in the pathogenesis of schizophrenia, EMBO Molecular Medicine, e12574, 2021 またLDB2とEGRタンパク質の相互作用は極めて不安定で通常の免疫沈降法などでは捉えることが相当困難であることが判明するなど、その生化学的性状について理解が進んだため。
|