研究課題/領域番号 |
20K07936
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
山田 光彦 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 部長 (60240040)
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研究分担者 |
三輪 秀樹 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 室長 (80468488)
古家 宏樹 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 室長 (90639105)
山田 美佐 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 科研費研究員 (10384182)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 統合失調症 / WDR3 |
研究実績の概要 |
これまでに我々は、未投薬の統合失調症患者に比べ抗精神病薬を投与した統合失調症患者の脳脊髄液中で、リゾホスファチジン酸(LPA)濃度が減少していることを報告した。一方、統合失調症の病態背景として「興奮性神経伝達と抑制性神経伝達のバランスの破綻」が注目されているが、これまでの検討で、グルタミン酸神経伝達の調節機構の1つにLPA受容体(LPAR)が関与している可能性が考えられた。そこで本研究では、我々が有する種々の統合失調症モデル/遺伝子改変動物を用いて、統合失調症の病態におけるLPAの役割を明らかにすることを目的とした。 本年度は、当研究部で新たに作製した統合失調症関連遺伝子WD repeat domain 3 (WDR3)改変動物を用いた。WDR3は、NMDA型グルタミン酸受容体遮断薬であるphencyclidineおよびドーパミン作動薬であるmethamphetamineの双方に応答して、ラット脳内で発現量が増加する遺伝子である。日本人統合失調症患者のゲノムを用いたWDR3の遺伝子領域および調節領域に座位する一塩基多型 (SNP) の解析では、WDR3遺伝子と女性の統合失調症との関連が示唆されている。WDR3ホモノックアウトマウスは誕生しなかったため、ヘテロノックアウト (WDR3-HKO) マウスの海馬を用いて、LPAR及びLPAR関連遺伝子の発現をreal-time PCR法により定量解析した。野生型およびWDR3-HKOマウスにおいて、LPAR1, 2, 4, 6の発現に有意な変化は認められなかった。LPAR3及びLPAR5は発現量が低かっため、定量解析はできなかった。また、LPAR産生酵素 autotaxin (ATX)及びLPA分解酵素 plasticity-related gene 1 (PRG1)についても定量したが、有意な変化は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、統合失調症関連遺伝子WDR3改変動物に焦点を絞り解析を行った。LPAR1~6及びLPAR関連遺伝子について野生型とWDR3-HKOマウスの間に有意な変化は認められなかったが、十分数の個体を得て解析を完了できたことから、「おおむね順調に進展している」と考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、研究部で開発してきた統合失調症モデル/遺伝子改変動物を用いて、統合失調症の病態におけるLPAの役割を明らかにする。次年度は、自発運動の亢進等の統合失調症様症状を惹起するが明らかとなっているMK-801投与モデル動物を用いて、LPARアンタゴニスト前処置による細胞外グルタミン酸濃度の変化をin vivo マイクロダイアリシス法により測定する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
キットや抗体などの購入を予定していたが、海外での生産と輸送が遅れているため、年度内に到着しなかった。次年度納品予定であるので、これらの購入費用として使用する。
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