研究課題/領域番号 |
20K07939
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
工藤 隆司 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (40613352)
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研究分担者 |
木村 太 弘前大学, 大学院医学研究科, 准教授 (30466510)
二階堂 義和 弘前大学, 医学研究科, 講師 (50613478)
竹川 大貴 弘前大学, 医学部附属病院, 助教 (80834803)
冨田 哲 弘前大学, 大学院医学研究科, 准教授 (90736365)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ケタミン / うつ病 |
研究実績の概要 |
近年麻酔薬ケタミンのうつ病への有効性が話題となっているが、作用機序に不明な点が多く、頻用への安全性には懸念があることから、本研究では、ケタミンの抗うつ作用機序解明に向けた試みをおこなっている。うつ病へのケタミン投与は本邦では承認されていないため、jRCTに登録したうえで麻酔薬ケタミンをうつ病患者へ投与し、効果の評価と作用機序に関わる候補バイオマーカーを測定している。ケタミンは1週間に1度、2回投与し、有効性の評価に関しては、投与から4時間、1日、3日、7日後、2回目の投与から7日後に自己記述式(QIDS)、精神科医による面接型の評価(MADRS)をおこなっている。現在のところ、どちらにおいても有効性が確認され、特に2回目の投与から7日後においてはMADRSにおいて著明な有効性が認められた(Friedman検定)。 2023年度ではこれまでのサンプルからNGAL、BDNF、CRP、TNF-α、leptin、IL-6、C-peptideをELISAにより測定したが、現在のところケタミンの抗うつ作用との関連を疑う特徴的な変動を示すバイオマーカーは明らかにはなっていないが、個々の症例をみると特徴的な変動を示すものもある。現在24例まで症例が得られたが、昨今の感染症による社会情勢の影響を受けていたこともあり、まだ、症例数は不十分である。徐々に感染症による社会情勢が回復の兆しを見せ、症例も増えることが予測され、今後新たな知見が得られる可能性はある。今回得られた結果の中で、一般的には抗うつ効果とともに上昇するBDNFが投与4時間後で有意に減少していたことが予想外であったが、今後も症例を重ねて考察していく。これまでの結果は、日本麻酔科学会の指定演題としてシンポジウムで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
感染症による社会情勢により症例が思うように集まらなかったが、徐々に社会情勢は改善傾向にあり、症例数は増えている傾向であり、次年度内に目標症例数に到達できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
各種候補バイオマーカーを測定してきたが、現時点ではケタミンの抗うつ作用に関わる変動を示すものは統計上確認されていない。しかし、抗うつ効果とともに上昇することで知られるBDNFがケタミン投与直後で有意に低下していたことは新たな発見であった。これまでケタミン投与後に経時的に多くのバイオマーカーを測定してきた研究報告はなく、本研究が初となるため、さらに症例を重ね、候補バイオマーカーの発見につなげたい。2024年度が最終年度になるが、うつ病患者だけで検証を進めるのは数としても現実的に困難なため、将来的には特徴的な変動を示したバイオマーカーを反映させたモデルラットにケタミンを投与して行動試験をおこなう形のリバーストランスレーショナルリサーチで裏付けをおこないたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
各種バイオマーカーを測定するためのキットを購入するが、1セットで10人程度の分量を測定できるため、少ない症例数でキットを開封すると効率が悪くなり、ある程度症例が集まった時点で測定する必要がある。そのため、前年度はキットの購入を集まった症例に応じて少量ずつ購入していたため。今後もサンプル解析のためにバイオマーカー測定キットの購入に資金をあてる。
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