研究課題/領域番号 |
20K07940
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
本田 秀夫 信州大学, 医学部, 教授(特定雇用) (20521298)
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研究分担者 |
篠山 大明 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (90447764)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 転帰 / 成人期 / 発生率調査 / 療育 / 支援 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、自閉スペクトラム症(以下、ASDと略)の子どもたちに対する療育・支援と成人期における転帰との関連について、20年以上にわたる長期追跡調査を通して検討することである。調査対象は、われわれが以前に行った横浜市港北区における1988年から1996年までの出生コホート31,426名を対象としたASDの累積発生率調査(Honda et al., 2005)で7歳までに悉皆的に把握されたASD症例278名のうち、2017年度から2019年度にかけて行った成人期の転帰調査に書面で調査の同意が得られた170名(平均24.6歳)である。2020年度は大きく2つの調査を行った。 1つ目は、調査対象の診療録から、幼児期から成人期までの全ての診療情報を所定の調査用紙に記録した。更に、就学前にうけた療育と学齢期にうけた特別支援教育の有無や内容について、集計や統計解析を行うためにインターネットにつながない本研究専用のパソコンに入力した。 2つ目は、上記対象のうち同意が得られた18名に対して、ADOS(ASD評価のための半構造化観察検査)を実施した。面接は本研究のために契約した調査員(公認心理師)2名によって行われ、面接時間は平均60分程度である。さらに、同意が得られた2名に対して、追加で平均60分程度の調査用紙を用いた調査を行った。この調査内容は、AQ-J(日本語版自閉症スペクトラム指数)、WHOQOL26(生活の質に関する調査)、ウェルビーング尺度(WEMWBS)、主要5因子性格検査、完全主義尺度である。これらの調査結果を、インターネットにつながない本研究専用のパソコンに入力した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査対象170名全員の20年以上の診療情報をパソコン入力することができた。就学前に療育をうけた人は138名、学齢期に何らかの特別支援教育をうけた人は145名であり、研究計画当初の想定通り、調査対象の多くがASDに対する早期支援をうけていることが確認できた。解析は今後の課題であるが、小児期にうけた支援と成人期の転帰との関連を検討することが可能であるデータベースであることについて見通しがたったことは、今年度の大きな収穫である。また、本人に対する調査を18名に実施することができた。研究倫理を遵守し対象者とのトラブルもなく、調査記録も安全に保管されている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進にかんして、大きく2点あげられる。1つは、今年度に行ってきた面接調査を計画的に進めていくことである。調査対象170名の中には、障害が重度のため面接調査が困難なケースや、本人が小児期に通院していた自覚がなく倫理的な観点からも調査を依頼することが不可能なケースも含まれる。そのため、残り数名程度を見積もっている。これについても本研究の予定期間内で完遂が可能である。 2つ目は、これまで得られた調査内容を集計、解析していく作業である。面接調査で得られたデータに加えて、これまでの診療録から得られた20年以上にわたる発達や生活面に関わる膨大なデータがあり、それらを研究の目的にそって整理し解析をしていく。なお、これらの作業過程においては、常に個人情報の扱いに細心の注意を払うことを心がける。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、人件費および旅費が予定より少なかったことが主たる理由である。研究自体は会議のオンライン化などによって対応したことで順調に行えた。次年度もコロナ禍の影響が予想されるが、可能な限りデータ収集に努めることとしたい。
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