研究実績の概要 |
出産後は抑うつ状態に陥るリスクが高い時期であり、産褥婦の自死や児の虐待に繋がる可能性を考慮すると、早期の適切な介入に繋がる要介入群の選定ツール開発は重要課題である。本研究は、①妊産婦自身による主観的評価、②医療従事者による客観的評価、③採血データ等から得られる生物学的指標を併せた検討を行い、介入を要する産後抑うつ状態を選定する心理社会的因子ならびにバイオマーカーを明らかにすることで、統合的に要介入者を選定するツールの開発を目指すものである。 本研究では、申請者らが2004年より実施している前向きコホート研究で収集済みの評価を用いる。本コホートでは、既に1,600名以上の妊産婦から同意を得ており現在も継続して進行中であるが、2020年初春よりcovid-19の影響によりサンプリングを一時休止している。本コホートの対象は研究同意を得た20歳以上の妊産婦であり、調査時期は、妊娠初中期、妊娠後期、産後5日目、産後1ヶ月である。調査票には、抑うつ状態、人格傾向、ソーシャルサポート等に関する評価項目を含み、加えて対象者の年齢や過去のうつ病エピソードなど、心理社会的背景や健康に関する項目について確認している。 2020年度は、収集済みの評価から、初産婦は経産婦と比較し妊娠中から不安が高いこと、初産婦が産後の抑うつ状態の高リスク群であることを明らかにした。本結果は、申請者が筆頭著者として国際誌に発表した(Nakamura, Y. et al. Perinatal depression and anxiety of primipara is higher than that of multipara in Japanese women. Sci Rep 10, 17060, 2020)。
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