研究実績の概要 |
本研究は、産後に抑うつ状態を呈するリスクが高い要介入者を選定するツールを開発し、早期の適切な介入、産後抑うつ状態の早期改善を目指すものである。 2020年度は、収集済みの評価から、産後の抑うつ状態を予測する因子の検討を行った。その結果、初産婦は経産婦と比較し妊娠中から不安が高いこと、初産婦が産後の抑うつ状態の高リスク群であることを明らかにした。本結果は、申請者が筆頭著者として国際誌に発表した(Nakamura Y, et al. Sci Rep. 2020;10(1):17060.)。 2021年度は産後の抑うつ状態との関連が予測される妊娠中の人格傾向およびソーシャルサポートに着目し、産後うつ病ハイリスク群の人格傾向の特徴等を検討した。その結果、Temperament and Character Inventoryで評価される人格・性格のうち、妊娠中の損害回避と自己志向が、産後の抑うつ状態を予測すること、ソーシャルサポートが部分的にその媒介をすることを明らかにした。本結果は、申請者が筆頭著者として国際誌に発表した(Nakamura Y, et al. Front Psychiatry. 2021; 12: 816342.)。 2022年度は、機械学習の手法を活用し、産後5日目までデータを用いて産後1ヶ月時点の抑うつ状態を予測するモデルの構築を行った。本結果は、申請者が筆頭著者として国際誌に投稿中である。また、生物学的指標として血漿中の炎症性サイトカインに着目し、 Bio-Plex Pro Human Cytokine Screening Panelを用いて、うつ病との関連が指摘されている IL-1β, IL-6, TNF-αについて解析を行い、産後の抑うつ状態との関連を確認した。 以上の結果から、要介入者を選定するツールの開発に繋がる成果を得られた。
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