研究課題
あらゆる疾患モデルにおいて病態の生物学的基盤の再現は不可欠である。現行のうつモデルマウスは行動の表面妥当性は有するが、疾患に対する構成的妥当性が満たされていない。本研究は不完全なうつモデルマウスに構成的妥当性を付与することを目的としている。まず、ヒト健常者前頭葉で観測されている神経活動がマウス相同部位においても計測できるか検証するため、マウス内側前頭前野(mPFC)に光学プリズムを埋込み、下辺縁皮質(IL)、前帯状皮質(AC)および前辺縁皮質(PL)のイメージングを行なった。その結果、正常マウスmPFCとヒト健常者前頭葉神経活動が概ね対応関係にあることが明らかになった。次にヒトうつ病のバイオマーカー候補である前頭葉25野の過活動がうつモデルマウスの相同脳領域であるILにおいても存在するかを調査した。1日6時間の全身拘束を21日間行いストレス性うつを発症させたマウスに対して同様のイメージングを行なったところ、マウスILはストレス後、有意に高い神経活動を示すことが明らかとなった。一方、ACおよびPLではストレス前後で違いは検出されなかった。最後に、リポ多糖(LPS)投与による全身炎症を介したうつモデルマウスを用いて、異なる原因によるうつ状態の神経活動を計測した。ストレス性うつと同様、LPS投与前後でILの神経活動亢進が認められ、他領域では変化が無かった。なお、両モデルともに強制水泳による行動実験によりうつ状態にあることが確認されている。これらの実験結果はヒトうつ病患者とうつモデルマウスの前頭葉神経活動に対応関係があることを示しており、ヒト、マウスに共通した神経科学的基盤がうつ病に存在することを示唆している。
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Mol Psychiatry
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Sci Rep
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