研究成果の概要 |
日本でのうつ病の生涯罹患率が高く, 抗うつ薬効果が得られない人における自殺率の増加が大きな社会問題となり, その病態メカニズムの解明は極めて重要である。本研究はストレス負荷のうつ病モデルマウスよる行動変化、および脳内の免疫担当細胞であるミクログリアにおけるオートファジーの関与を明らかにした. ストレス負荷したマウスの脳内における初期のオートファジーの活性が観察され, うつ病患者の死後脳の前頭前野においても同様な変動が見られた. さらに, オートファジーの制御因子である FKBP5 がストレス耐性群マウスの前頭前野で有意に増加し,新規抗うつ薬の開発につながる重要な生物学的プロセスを示した.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
従来の抗うつ薬の効果が現れるのに数週間がかかる.さらに,既存抗うつ薬の抵抗性も含めて画期的な治療薬の開発が強く求められている. 本研究はうつ病モデル動物およびうつ病の死後脳検体を用い, 前頭前野の免疫担当細胞である三玖における初期オートファジーの活性および制御因子の変動を見出し, 新たな抗うつ薬開発の切口になると期待できる. さらに, 本研究結果は,オートファジーを介したミクログリアとニューロンとの制御ネットワークを解明するための新しい戦略につながり,うつ病だけではなく,他の精神疾患,神経変性疾患,および免疫疾患などの研究にも大きく寄与し,臨床応用に向けた研究基盤を提供できるものと考えられる.
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