高齢化を背景とした認知症患者の増加が問題となっており、認知症の根本的な治療法の確立は急務である。認知症の大多数を占めるアルツハイマー病や前頭側頭葉変性症では、認知症の臨床症状がタウタンパク質の異常蓄積や神経細胞死とともに出現してくることが知られており、タウタンパク質は治療介入のために重要なターゲットである。タウタンパク質はスプライシング様式によって3リピートタウと4リピートタウに分類される。4リピートタウはβシート化を促進し、神経毒性が高いタウオリゴマーの形成を促進する。アンチセンスオリゴや化合物を用いて、認知症患者神経細胞におけるタウのスプライシングやその発現量の制御を行い、タウオリゴマーの減少と神経細胞死抑制を可能にする認知症治療候補薬の同定を目指すことを目的とする。 2023年度は、前頭側頭葉変性症患者の疾患特異的iPS細胞から作製した神経細胞を用いて、前年度までに見出した化合物およびその周辺を含む化合物のタウオリゴマー蓄積や細胞死に対する有効性評価を行い、さらにその分子ターゲットの同定を行った。同定した分子のノックアウトiPS細胞を作製し、FTLD病態に対する有効性を見出した。さらに、ノックアウトiPS細胞から作製した脳オルガノイドのシングルセル遺伝子発現解析を実施し、FTLDの病態への介入効果を見出した。
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