研究実績の概要 |
うつ病は、様々な症状が複雑に絡み合っている病気であり、病態を正確に捉えることが困難である。また、うつ病は、慢性ストレスにより神経の可塑的変化(シナプス減少など)を引き起こし、通常の神経活動の回路と異なる可能性がある。本研究は、この神経可塑的変化の要因にグリア型グルタミン酸トランスポーターの発現減少が関与するかを明らかにすることを目的としている。本研究成果は、うつ病の病態解明に寄与することが期待される。 本年度は、慢性ストレス後の神経活動について興奮性ニューロンと非興奮性ニューロンに分けて検討した。具体的には、慢性社会的敗北うつ病モデルマウスを作成し、神経活動の指標であるc-fosとグルタミン酸作動性ニューロンのマーカーであるGlsについて多重染色を行った。各脳領域で認められるc-fos陽性細胞を興奮性ニューロンと非興奮性ニューロンに分類して解析した。その結果、Anterior cingulate area, Nucleus accumbens, Caudoputamen, Dorsal peduncular area, Gustatory area, Infralimbic area, Motor area, Olfactory tubercle, Prelimbic area, Taenia tectaなどの領域で、慢性ストレスによる興奮性ニューロンの神経活動の変化が認められた。また、非興奮性ニューロンの神経活動が、興奮性ニューロンと同様の挙動示す・逆の挙動を示す・ストレスで影響を受けないなど領域ごとで特徴が認められた。さらに皮質領域の各層で異なるc-fos発現パターンが観察された。
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