研究実績の概要 |
本研究の目的は、レクチンタンパクの一種であるガレクチンと心理状態の関係を検討することである。本研究の立案時は、学内等で被験者をリクルートする予定であったが、新型コロナウィルス感染症の拡大により、リクルートができなかった。このため、別の研究で収集した健常者の血清サンプルを二次利用して、ガレクチン-3とBDNF、proBDNF、GDNFの濃度の相関を調べた(N=50, 全て男性)。また心理テスト(LSAS、 ASRS、AQ、BDI、POMS)のスコアとガレクチン-3の濃度の相関を調べた。 1.ガレクチン-3と神経栄養因子との相関: BDNFの濃度はガレクチン-3濃度と負の相関があった( r = -0.284, p = 0.045*)。その他の神経栄養因子とガレクチン-3の濃度に相関は認めなかった(proBDNF; r = 0.173, p = 0.229, GDNF; r = 0.011, p = 0.939)。 2.ガレクチン-3濃度と心理テスト: LSAS(社交不安障害の尺度)、ASRS(ADHDの尺度)、AQJ(自閉スペクトラム症の尺度)、BDI(うつ病尺度)、POMS(気分状態の尺度)、いずれにおてもガレクチン-3との濃度の間に有意な相関を認めなかった。 今回の研究結果より、ガレクチン-3が上記心理テストとの相関を認めることができなかった。今後は、他のタイプのガレクチンでの検討や、健常者だけでなく精神疾患を有する群においても同様の研究をする必要がある。
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