研究課題/領域番号 |
20K07976
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
大塚 耕太郎 岩手医科大学, 医学部, 教授 (00337156)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 精神保健 / 自殺対策 / ハイリスク者ケア / 教育効果 / 教育法 / コロナ禍の感染対策 / 双方向性教育 |
研究実績の概要 |
自殺対策について、青少年、女性、中高年、高齢者、職域、アルコールや統合失調症など精神障害、大規模災害の被災者というサブグループ毎の教育プログラムを組み合わせた包括的な方法論の開発を目的とし、令和3年度は各プログラムの開発・実施と効果評価の方法論の構築を行った。特に、新型コロナウイルス感染症でのメンタルヘルス対策の問題や自殺リスクの上昇が生じ、さらに実施上の実務者の課題もあるため、これらの状況も踏まえて研究を進めた。 具体的には、サブグループ毎のプログラム開発として、児童思春期の対策、被災地のゲートキーパー育成、コロナ禍での自殺対策の進め方について、従事者の課題を整理し、プログラムの方法論を構築した。ハイリスク者ケアとして自殺の危険性があるものなど心理社会的問題を抱えるものへの基本的介入法の構築も行った。効果的な方法論の検討として、地域精神保健従事者へのコロナ禍も踏まえた教育プログラムを作成した。特に、教育プログラム実施時の感染症対策の方法論、オンライン型研修やeラーニング、双方向性教育モデルを部分的に取り入れた。コロナ禍の中期的な自殺対策の課題を整理し、地域の関連の教育の場を活用して、教育プログラムを実施した。また、必須な知識を整理し、普及啓発プログラムを作成し、さらにスティグマ対策を視野に入れたプログラムを加えた。教育効果の向上と効果評価のモデルとして、Q&A式、少人数へのクリッカーシステムの導入も図り、統計ソフトで回答内容を整理した。 コロナ禍で感染症対策の問題と対応についても基盤として取り入れる必要があり、地域では、地域精神保健に関する教育内容に加えて、感染対策を取り入れた実施法、感染と連携した自殺対策の教育課題も教育プログラムに組み込んだ。また、地域精神保健の課題について整理し、地域精神保健への包括的な教育アプローチ、コロナ禍の実施の方法論について学術発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度も、新型コロナウイルス感染症の問題は緊急事態宣言が行われるなど、地域でさらに拡大した。また、地域精神保健従事者も日々刻々と地域のリスクが推移する状況に注意を払いながら、事業実施上の悩みや事業の方法論上の悩み、対策上の困難さを抱えており、地域の関連事業の中止、延期、実施方法の変更が余儀なくされることもしばしばであった。特に、高い感染性を持つ変異株の出現により、従事者は地域の感染対策の実施上の課題を抱え、健康教育や地域活動の場では、参加者が安心して参加できる様、換気やゾーニングなど環境面への配慮や、参加される方々の健康面への配慮がより求められた。また、引き続き、地域での感染者などへの誹謗中傷や、心無い偏見に直面することもあり、スティグマ対策を行うことも地域の役割として重要であった。 この様に想定された計画について、上記の視点を教育法の基盤としてさらに強化したプログラムや実施法を行った。しかし、当初想定していた集合型の教育プログラムは、地域の感染対策の状況を踏まえて実施する必要が生じ、今年度の地域のコロナ禍の状況においては、見込んだ対策の領域よりも令和3年度も少なく、実施についてもオンライン型や感染対策が行われる環境下での小集団、対面を控えた実施法など、限定的にならざるえなかった。また、地域精神保健従事者の困難な状況の中で負担も軽減するため、フォーカスグループの質的評価はきめ細やかさよりはケア的な視点での把握となった。 以上の点から当初見込んだよりも研究の進捗については若干遅れていると考えられた。しかし、一方で感染対策を踏まえた教育法、オンラインでの教育法、双方向性の教育法において、新たな方法論の構築と実施が出来たという点で、地域精神保健が困難を抱える中で有意義な取り組みであったと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は各プログラムの実施と効果評価研究の実施を目的として、令和2年度、令和3年度に取り組んだ教育モデルをさらに発展させて質の向上を目指し、ハイリスク者ケアの教育プログラムをさらに進める。効果判定の方法論を構築したため、教育効果が向上するような内容を検討し、刻々と推移する地域精神保健の状況を踏まえて、引き続き、効果は量的な評価とフォーカスグループによる質的評価も組み合わせた混合研究法(Pope)を取り入れて取り組む。実施された教育アプローチの内容も踏まえて、教育法、教材の改訂を行い、さらにコロナ禍の実施の方法論についてもより深め整理する。昨年度、方法論の開発にも取り組んだことを活かし、ある程度の、実施上の手順を検討し実務者の簡易的なマニュアル作成や普及啓発に取り組む。また、本研究で取り組む課題について、学術報告などを通じて広く還元していく。
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