研究課題/領域番号 |
20K07979
|
研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
東 晋二 東京医科大学, 医学部, 教授 (30365647)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 認知症 / 進行性失語症 / 神経心理 / アルツハイマー病 / 前頭側頭葉変性症 / 失文法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的となる失文法症状は言語障害の一つであり、意味性認知症、ロゴペニック型進行性失語症、進行性非流暢性失語症と並ぶ、進行性失語症の下位分類である。しかし、診断においては、呼称障害のような単語の問題と異なり、文法産生や理解というより複雑な認知過程を検査する必要があるため、実臨床の場では気づかれないことも多いのが現状である。 そのような背景を踏まえて、今回我々は新しい失文法障害を検出する心理検査を用いて、診断に重要な検査内容を調べることを本研究の目的とした。初年度はこの心理検査を作成し、実際に健常者や失語症のある認知症患者に実施している。ここまで概ね順調に検査は実施できており、徐々に症例が積み重なっている最中である。 また、コロナ禍であることを鑑み、自宅でも受けることができるインターネットを用いた言語療法の研究を開始した。内容は単語の理解や再生だけでなく、文構造・助詞の理解、産生の訓練を含み、失文法型の患者も参加している。ここまでの解析結果をみると、治療継続が可能であった群と不継続群では全般的な認知機能や視空間認知、前頭葉機能などに大きな差はなく、呼称障害の存在なども阻害因子とはなっていない。そのため、比較的多くの患者が治療を継続できている。また、治療意欲向上に関わる要因の解析を進め、治療に使用するコンテンツの適正な内容についても知見を得ることができている。現在、これらの内容は、学会などへの報告を準備中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は失文法障害を検出する新しい心理検査の開発である。現在、健常対照群と失文法型を含む進行性失語症の患者にこの心理検査を実施している最中である。初年度の段階である程度の人数の検査を終えることができており、本研究課題は概ね順調に進捗している。 また、同時に失文法型の認知症患者の認知訓練の開発も本課題のもう一つの大きな目的である。2020年度は世界的に起きたコロナ禍のために、どの医療機関でも認知症を含めた高齢者の診療やリハビリテーションは十分に行うことができず、本研究もその影響を受けた。そこで、当初の研究計画にインターネットを活用した新しい言語訓練の開発も追加し、現在、研究同意者を対象に研究を進めている。 これらの研究成果の一部は現在解析中であり、学会や論文発表の準備を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、失文法の心理検査を対象者に実施し、症例を積み重ねていく。日本語は同じ内容でも表現方法はいくつか存在し、より適切な解析を行うための症例数を得るべく、研究同意を得ていく。 訓練方法に関しても、これまでの結果を踏まえて、より効果的で適切な方法論を構築していく。今後も、コロナ禍の影響がしばらく継続することが考えられ、現在調査中のインターネットを利用したアプローチは重要なテーマとなるであろう。ここまでは順調に実施ができており、引き続き症例数を増やしていけるように努力をしていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ禍による世界的な移動制限、自粛により、学会、打ち合わせなどの出張計画ができなくなったために、これらの交通費が不要となった。しかし、逆に、研究計画内容も含めて、インターネットを介したリモート会議やリモート状況での研究への振替が起こり、そこへの設備投資が必要となった。しかし、急速な研究計画の変更や、社会情勢を見ながらの研究実施のために、当該年度内にこれらの計画、準備が不十分とならざるをえず、未使用額が発生している。今後も社会情勢をみながらより適切な研究推進計画を行なっていく。
|