研究課題/領域番号 |
20K07990
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中嶋 憲一 金沢大学, 先進予防医学研究科, 特任教授 (00167545)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 人工知能 / 画像データベース / 心不全 / リスクモデル / 多施設研究 / 脳受容体画像 / 神経変性疾患 |
研究実績の概要 |
本研究の目的である人工知能(AI)あるいは機械学習を利用した画像診断と予後推定に関する2年までの研究実績は以下の通りである。 1)SPECT画像を用いた臓器セグメンテーション:交感神経イメージング用放射性医薬品である123I-MIBGの心臓集積は、重症心不全やパーキンソン病など高度に集積が低下した症例では3次元的セグメーンテーション(臓器を分離して評価すること)が難しかったが、ディープラーニングを用いてMIBGのSPECTの体軸断層像を入力し教師あり学習を行ない、自動的に各臓器の分離が可能となり、心集積全体を計算できるようになった。 2)画像および臨床データベースの作成:心不全のデータベースを構築するため、複数施設から臨床データベースを収集中である。さらに、欧州の心不全データベースについてもオランダ、イタリアとの研究者との共同研究として大きなデータベースを構築中である。 3)心不全データを用いた機械学習:心不全データベースから、心不全により生ずる可能性がある心不全死と不整脈死(突然死を含む)を分離して予測するモデルを構築した。このモデルでは、心臓死予測因子となる13因子を用いており、その成果は米国心臓核医学会誌(2022)に公開した。さらに、これをソフトウェア化して一般的に臨床でも利用できるような方法を検討する。 4)脳ドパミントランスポータ画像の機械学習:脳のドパミントランスポータを描画する123I-ioflupanの集積を解析する方法は、関心領域法(線条体とバックグラウンドから計算する方法)が主流であったが、機械学習を用いて線条体への集積の集積度(高低)、対称性、尾状核と被殻の集積パターンの特徴量を利用し、さらに臨床情報を加えたモデルが従来の関心領域法に勝る診断率を有することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)SPECT画像を用いた臓器セグメンテーション:123I-MIBGのSPECT像を用いたディープラーニングにより、心臓セグメンテーションは可能となったが、集積が極端に低い症例や、欠損の大きい症例では見えない臓器を同定する必要があるため、不確実性もあることも判明している。計測上は心筋全体の集積を計算することが可能であることが明らかになった。これらの成果は、EJNMMI Res 2021;11:105にまとめて報告した。 2)画像および臨床データベースの作成:心不全データベースは症例数を増加させて収集中である。突然死を含めた症例数を確保し、致死的不整脈に対する心臓デバイス(植え込み型除細動器など)の適応のある症例のデータを解析中である。また、脳領域でもレヴィー小体病の患者の解析に応用できるようなデータベースを構築した。新たに台湾でもMIBG検査が可能となったので、共同研究として123I-MIBG指標の統一を行う校正ファントム実験を開始した。 3)心不全の死亡原因に関する機械学習:MIBGを含む13変数での機械学習により、死亡原因の推測が可能であるという検討結果が得られ、J Nucl Cardiol 2022; 29:190-201に報告したが、特に重要な因子を検討して予測モデルの改良と精度の改善を図っている。この解析にあたっては、国内の多施設データベースだけでなく、国外のデータベースの利用も視野にいれて検討するため、オランダ、イタリアの研究者とも共同研究を開始した。 4)脳ドパミントランスポータ画像の機械学習:2年目までの検討では機械学習で画像の大きな分類まで可能となったが、さらに確定診断を加えて画像の異常パターンを検出し、診断分類を行う自動診断方法を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
1)SPECT画像の臓器セグメンテーション:心臓のセグメンテーションは3次元的なSPECT画像でも、形態情報なしにディープラーニングにより可能となったが、さらに心不全の重症度診断や予後推定指標を検討する。SPECT-CTの利用によりCTの形態画像を利用することによって、形態と機能画像を統合した臓器セグメンテーションを検討する。 2)画像および臨床データベースの作成:心不全データベースは症例数を増加させているので、心不全死や突然死を含め、さらに不整脈に対する心臓デバイスの適応のある患者データを解析する。また、脳領域でもレヴィー小体病(パーキンソン病とレヴィー小体型認知症を含む)の患者の解析に応用できるようにデータベースを構築しているので、このデータベースにより機械学習を行い、最終的に適切な診断モデルを作成する。 3)心不全の死亡原因に関する機械学習:13変数を用いた機械学習により死亡原因の推測が可能であるという検討結果が得られているので、特に重要な因子を検討して予測モデルの改良と精度の改善させる。現状では心不全死の予測精度は十分高いが、不整脈死の予測を中心に再検討する予定である。この際には、国内と国外のデータベースが利用も利用できるので、疾患の背景や、異なる国の診療体制のもとでの予測能も検討する予定である。 4)脳ドパミントランスポータ画像の機械学習:2年目までの検討では機械学習で画像の大きな分類まで可能となっており、臨床診断をもとにして画像の異常パターンに加えて、診断上の分類を行う自動診断方法の開発を目指す。さらには、新しいモデルを用いたソフトウェアも作成予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会出張のための旅費が利用できなかったこと、および最終的な報告のためのOpenAccess費用を含むため、最終年度に合わせて利用する予定である。
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