研究課題
初年度:今回の実験のキーデバイスとなる胸管内リンパ液自動誘導システムの開発を行った。これは、一方は胸管に留置し、もう一方は大静脈に留置し、それぞれに開発したポンプを接続することで、胸管内のリンパ液を開発したポンプで回収し、大静脈内に適宜流出させることを目的としている。今回の実験環境はリンパ管内であるため、低速であることに加え胸管内を走行する量は多くなく、完全に新規での開発が必要であった。次年度:ブタにおけるリンパ管造影の方法(鼠径リンパ節穿刺、開腹による腸管膜リンパ節穿刺、開腹による腸骨リンパ節穿刺)、透視下での胸管穿刺方法、静脈角カットダウンによる胸管への外科的アクセス方法の挑戦、逆行性胸管内カテーテル挿入の方法等、リンパ系の動物実験の基礎となる方法を確立した。胸管に挿入したカテーテルと、中心静脈に挿入したカテーテルを、我々が開発した胸管内リンパ液自動誘導システムを介して接続し、生体内で動作することを確認した。これにより生体内で新たなリンパ液の能動的灌流方法を確立することに成功した。最終年度:遠位胸管閉塞ブタモデルを作成方法を開発した。そして、同モデルを用いて胸管内に導入したカテーテルから持続的にリンパ液を回収するために必要な至適ポンプ設定および改良を行った。今回の実験により、通常回収が困難なリンパ液の回収方法が確立し、心不全患者に続発して生じるリンパうっ滞、リンパ瘻に対する新たな治療方法の基礎実験およびコンセプトが確立した。