研究課題/領域番号 |
20K08008
|
研究機関 | 大阪薬科大学 |
研究代表者 |
平田 雅彦 大阪薬科大学, 薬学部, 講師 (00268301)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | SPECT / フマル酸呼吸 / がん幹細胞 / 放射性ヨウ素 / Flutolanil / ミトコンドリア複合体II |
研究実績の概要 |
一部のがん種は栄養的に極めて劣悪な環境で生存・増殖していることが知られている。このようながんは早期発見が難しいばかりでなく、標準的な化学療法の奏効率も低く再発の可能性が高い難治性がんである。これらのがん細胞は、増殖に必要なエネルギーをフマル酸呼吸により得ていることが明らかにされつつある。フマル酸呼吸は、がん幹細胞においてもその存在が強く示唆されており、その際、ミトコンドリア呼吸鎖の複合体Ⅱが重要な役割を果たしている。がん幹細胞における解糖系のエネルギー産生機構からフマル酸呼吸へのスイッチイングを把握できればがん細胞のエネルギー産生機構の解明に寄与するだけでなく、難治性がん診断や治療のモニタリングが可能となり、低酸素状態で生息するがんやがん幹細胞治療への展開が容易になる。また、フマル酸呼吸は正常細胞には存在せず、フマル酸呼吸を指標に難治性がん細胞を画像化することが期待される。そこで、フマル酸呼吸能を複合体Ⅱのイメージングを介して把握可能な新規放射性プローブの開発を行う。駆虫薬のFlutolanil誘導体は、フマル酸呼吸によるATP産生機構すなわちミトコンドリアの複合体Ⅱを選択的に結合・阻害する。今年度は、Flutolanilとその誘導体の構造活性相関に基づき、がん幹細胞におけるフマル酸呼吸はミトコンドリア呼吸鎖複合体のうちがん幹細胞に特異的な部位となる複合体Ⅱを標的とする新規放射性ヨウ素標識プローブをドラッグデザイン・合成を試みた。その結果、新たな化合物の合成に成功した。さらに、トリブチルスズ基を有する放射性ヨウ素標識前駆体を合成した。前駆体から放射性ヨウ素標識を行ったが、反応がほとんど進行しなかった。これは前駆体の溶媒への溶解性が低いためと考えられた。現在、新たな前駆体を検討、合成中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
放射性プローブ研究の重要な柱である標識反応が達成されておらず、この問題を解決しなければならない。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、真意放射性プローブの放射性ヨウ素標識を検討しているが、トリブチルスズ基を有する前駆体からは標識が困難であった。この結果は、前駆体の溶解性に起因していると考察している。従って、適切な溶媒の選択などを行い、標識の改善を行う予定である。 一方、標識が低収率であることが予想されることから、短時間、高収率での標識が可能な新たな前駆体の考案・合成する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
計画では、初年度に、プローブの放射性ヨウ素標識を行い、研究を進展させる予定であったが、プローブの標識が未達成となったため、細胞実験や動物実験が予定通り進められなかったため、次年度に使用額が生じた。 今年度は、新たな標識方法の検討をを行い、放射性ヨウ素プローブの合成を行い、計画に従って予算を使用する予定である。
|