研究課題/領域番号 |
20K08009
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
西村 恭昌 近畿大学, 医学部, 教授 (00218207)
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研究分担者 |
稲田 正浩 近畿大学, 医学部, 講師 (40738415)
石川 一樹 近畿大学, 医学部, 講師 (10511016) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 晩期有害事象 / 耐容線量 / 線量効果関係 / 線量体積ヒストグラム / 強度変調放射線治療 / 頭頸部腫瘍 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)で行った「上咽頭癌に対する強度変調放射線治療(IMRT)の多施設共同第II相試験(JCOG1015)」の線量体積ヒストグラム(DVH)と患者データを用いて、晩期有害事象と正常臓器の線量効果関係を明らかにする研究である。本研究は2020年8月にJCOGプロトコール審査委員会で承認され、さらに2020年に9月に近畿大学医学部で、2021年2月に国立研究開発法人国立がん研究センターの倫理委員会で承認された。 2021年度には、これらのデータを基に、内耳Dmean(平均線量)、甲状腺Dmean、水晶体Dmean、眼球Dmax(最大線量)、視神経Dmax、耳下腺Dmedian(中央線量), 耳下腺Dmean、中下咽頭収縮筋Dmean、喉頭Dmean、頸髄Dmax, 頸髄D1cc(1cc線量)、脳Dmax, 脳D1cc、脳幹Dmax, 脳幹D1ccなどのDVH因子と臓器特異的晩期有害事象との線量効果関係を検討した。その結果、脊髄炎G1以上と脳幹D1cc≧55.8Gy、中枢神経壊死G1以上と脳D1cc≧72.1Gy、聴覚障害G2以上と内耳Dmean≧44Gy、および中耳炎G2以上と内耳Dmean≧51.5Gyとの間に有意な線量依存関係が確認された。また、嚥下障害G2以上と中下咽頭収縮筋Dmean ≧41.2Gy、および甲状腺機能低下G1以上と甲状腺Dmean ≧45.6Gyとの間に線量依存傾向がみられた。JCOG1015では聴覚障害・中耳炎、脊髄炎の頻度が比較的高く、内耳および脳幹線量との相関が見られたため、内耳、脳幹線量のさらなる低減が望ましいと考えられた。以上の結果は、2021年11月にオンライン開催された第34回日本放射線腫瘍学会で発表した。その後、英文原著論文として執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はデータ解析が行え、いくつかのリスク臓器でDVH因子と臓器特異的晩期有害事象との線量効果関係が認められた。その成果は、第34回日本放射線腫瘍学会にて発表した。現在、原著論文として執筆中で、2022年度には米国放射線腫瘍学会での発表と論文掲載の予定で、研究は当初の予定通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、原著論文として執筆中で、そのなかで頭頸部腫瘍に対する強度変調放射線治療のより適切な線量制約について考察している。その結果は、2022年度に米国放射線腫瘍学会での発表および論文掲載の予定である。本研究の成果は、次の臨床試験のプロトコール作成に役立つものと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はコロナ禍の影響で、旅費支出が著しく減少し、次年度使用額が増加した。2022年度には米国放射線腫瘍学会での発表を予定しており、それに充てる予定。研究自体は順調に進んでいる。
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