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2021 年度 実施状況報告書

半導体PETと深層学習を利用したFDG PETからの腫瘍血流・代謝の同時定量

研究課題

研究課題/領域番号 20K08015
研究機関北海道大学

研究代表者

平田 健司  北海道大学, 医学研究院, 准教授 (30431365)

研究分担者 竹内 啓  北海道大学, 医学研究院, 助教 (30374515)
真鍋 治  東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 特任助教 (40443957)
久下 裕司  北海道大学, アイソトープ総合センター, 教授 (70321958)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード核医学 / FDG-PET/CT / 糖代謝 / 血流 / deep learning / deep neural network
研究実績の概要

F-18 fluorodeoxyglucose (FDG)はブドウ糖類似体であり、体内に投与してからポジトロン断層法(PET)で撮影することにより、体内の糖代謝の多寡を画像化できる。原理的には、FDGを投与した直後から連続PET撮影した画像は血流の情報を含む。血流成分を抽出する試みは過去にも行われてきたが、PETの空間分解能の低さによるarterial input function (AIF)取得の困難さ等のため、臨床的に使用されるレベルには至っていない。腫瘍の血流にはdrug deliveryや治療効果判定に関する重要な情報が含まれていると考えられる。そこで本研究では新技術を導入することで、FDGによる腫瘍の糖代謝・血流の同時定量を目指した。今回申請者らが用いる新技術は、ハードウェアとしては高い空間分解能を持つ半導体PETであり、ソフトウェアとしては機械学習の一種であるdeep neural network (DNN)である。高い空間分解能は小さい血管からのAIF取得に役立ち、DNNはコンパートメントモデル・フリーで直接血流を予測するregressorとなりうる。腫瘍血流はO-15標識水のPETによる測定値をgold standardとする。1回のFDG PET撮影で患者負担の増加なしに糖代謝と同時に腫瘍血流が定量することを目指している。2年目である2021年度も新規の前向き臨床試験の立ち上げには到達できなかったが、PETのAI解析に向けて不足するエビデンスを固めるため、O-15標識水やFDGによる後ろ向き研究やファントム実験、画像診断レポートと画像とを組み合わせる研究等を行った。とくにO-15標識水に関しては、PET撮影した肺画像をUCLAの研究者とともに解析し、肺血流の定量値を得ることに成功し、腫瘍血流定量につながる成果が得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

O-15水を満たした脳型ファントム(人体を模したプラスチック容器)をPET装置で撮影し、撮影条件の調整を行い、ヒトに投与するための基礎的なデータを得た。また、肺血流を測定するために本学で過去に行われた臨床研究においてヒトにO-15水を投与して撮影されたPET画像を後ろ向きに解析し、米国UCLAの研究者の協力も得て、血流定量画像を作成するプログラムを完成させた。一方、O-15水のヒトへの投与へ向けた準備は遅れており、IRB提出書類を作成中である。FDG PETに関しては、甲状腺癌の予後予測モデルの改良を試み、これまでの全身転移病変を同列に扱うモデルに比べて、臓器ごとに重み付けを行うモデルのほうが高い予後予測精度を持つことを示した(Uchiyama Y, et al. Ann Nucl Med. 2021 Nov;35(11):1223-1231)。他方、deep learningモデルの開発に必要な膨大な教師データを効率良く作成する手法の確立を目指し、日常診療で専門医によって作成される診断レポートに記載されるSUVmaxを病変位置特定のために使用した。これにより、画像とレポートのみから主要臓器の位置を自動的に学習させることに成功した(米国核医学会2022に採択済み)。また、deep learningをPETに応用するにあたって、これまでのAI応用事例に関する調査を行い、その結果を総説論文として出版した(Hirata K, et al. Ann Nucl Med. 2022 Feb;36(2):123-132)。

今後の研究の推進方策

2020年度と2021年度はCOVID-19の影響で研究に遅れが生じたが、2022年度は遅れを取り戻すべく下記のとおりに研究を進める。1.O-15水をヒトに投与するためのIRB申請を進める。2.コンピューター・シミュレーションをさらに進めて、FDGのdynamic画像から血流を算出するモデルを米国UCLAと共同開発する。4.診断レポート中のSUVmaxにより病変位置特定ができ、さらに主要臓器の位置も学習できることがわかったため、これを生かした実際の教師データ作成手法を開発する。5.2022年度は、2021年度に比べるとCOVID-19による行動制限は緩和されると予想されるが、集会形式の学術大会は制限される可能性があり、病院外の研究者が病院に立ち入ることも制限される状況が続く可能性もある。昨年度に引き続き、これらの悪条件に対応するために、リモート会議の体制を整えて、関係者間での定期的なミーティングを行う。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Artificial intelligence for nuclear medicine in oncology2022

    • 著者名/発表者名
      Hirata Kenji、Sugimori Hiroyuki、Fujima Noriyuki、Toyonaga Takuya、Kudo Kohsuke
    • 雑誌名

      Annals of Nuclear Medicine

      巻: 36 ページ: 123~132

    • DOI

      10.1007/s12149-021-01693-6

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Development and validation of a prediction model based on the organ-based metabolic tumor volume on FDG-PET in patients with differentiated thyroid carcinoma2021

    • 著者名/発表者名
      Uchiyama Yuko、Hirata Kenji、Watanabe Shiro、Okamoto Shozo、Shiga Tohru、Okada Kazufumi、Ito Yoichi M.、Kudo Kohsuke
    • 雑誌名

      Annals of Nuclear Medicine

      巻: 35 ページ: 1223~1231

    • DOI

      10.1007/s12149-021-01664-x

    • 査読あり
  • [学会発表] Combination of image and its report of FDG-PET/CT to generate probability map of anatomical terms using SUVmax as a bridge between text and image2022

    • 著者名/発表者名
      Kenji Hirata, Shiro Watanabe, Junki Takenaka, Rina Kimura, Yuko Uchiyama, Keiichi Magota, Kohsuke Kudo
    • 学会等名
      Society of Nuclear Medicine and Molecular Imaging
    • 国際学会
  • [学会発表] FDG-PET/CTのレポート上のSUVmaxを利用して解剖学用語を機械学習させる検討2021

    • 著者名/発表者名
      平田健司、渡邊史郎、内山裕子、竹中淳規、木村理奈、眞島隆成、 孫田恵一、工藤與亮
    • 学会等名
      第61回日本核医学会学術総会

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公開日: 2022-12-28  

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