研究実績の概要 |
tractography自動描出フリーソフト(Tractseg)を用いて、解析に用いる拡散強調画像の画質劣化やデータ不足で神経線維束描出にどの程度影響が及ぼすか検討した。 健常人男性8名に対し、3.0T MRIを使用して多段面同時励起技術(SMS)未使用条件をgold standard (GS)とした。SMS=2, 3, 4の条件と比較した。前処理を行った後、各神経線維束を描出した。GSに対する、各条件でのvoxel数とDICE係数(DSC)を評価した。加えて検査中断想定で、GSのMPG数を48, 32, 16, 8軸とした場合も評価した。 結果は、解剖学的走行と異なる神経線維束はどの条件においても視覚的に認めなかった。SMS比較は、平均voxel数はほぼ差がなかった。平均DSCもほぼ差がなかった。DSCは、SMS=2-3および2-4間では全神経線維束において有意差(p<0.0167)は生じなかったが、SMS=3-4間では4神経束で有意差が生じた。MPG数比較では、平均voxel数はGSに対し、印加軸数が減るほど減少した。平均DSCも、同様に印加軸数が減るほど減少した。 健常人における検討から、SMS併用に関して、SMS=4使用時に影響がある可能性が示唆された。MPGに関しては、印加軸数は多い方が良いが、16軸程度でもGSと遜色ない結果が得られることも分かった。以上より、SMS併用もしくはMPG数削減による撮像時間短縮の可能性が示唆された。臨床条件としては、SMS=2、MPG=64軸で約5分の撮像がデータ信頼性、有用性が高いことが示唆された。 また、ガンマナイフ治療前の脳動静脈奇形(AVM)患者10名に対しても上記の撮像データに対し解析を行った。一部AVM近傍で神経線維束が描出できない事例が生じたが、ほとんど反対側と同様の描出が可能であることが分かった。
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