研究課題/領域番号 |
20K08017
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
川島 博子 金沢大学, 保健学系, 教授 (70293355)
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研究分担者 |
宮地 利明 金沢大学, 保健学系, 教授 (80324086)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | MRI / 深層学習 / 乳癌 / 悪性度 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はMRIより得られる膨大な情報を,ディープラーニングを用いて解析・選別し,オーダーメイド治療に直結する乳癌悪性度層別化プログラムを確立することである.治療開始前に乳癌の悪性度,すなわち予後を予測することが最終的な目標であるが,比較的予後が良好な悪性腫瘍である乳癌は予後の把握に時間を要する.欧米では遺伝子検査による予後予測結果と対比する手法が一般的だが,本邦では残念ながら遺伝子検査は普及していない.よって,まず機械学習の効果を確認するための第一の課題を,乳癌術前化学療法の病理学的完全奏功の予測に設定した. 術前化学療法を行って病理学的完全奏功を得られた症例と得られなかった症例の2群に分け,術前化学療法の効果を治療前に予測することを試みた.術前化学療法を一旦開始すると手術まで最低でも6か月を要し,もし化学療法の効果が認められない場合はいたずらに手術が遅れ,患者の不利益となる.よって開始前に化学療法の効果予測が可能であれば患者の利益は大きい.術前化学療法によって病理学的完全奏功が得られた群と得られなかった群で臨床・病理データを比較したところ,病理学的完全奏功が得られた群では有意に腫瘍径が小さく,腫瘍内壊死が少なかった.他の臨床・病理データには有意差は認めなかった.続いて造影MRI画像上で乳癌部を用手的に抽出し,特徴量を抽出・解析した.まず,第一段階の特徴量のみを使用した検討を行った.単変量解析では病理学的完全奏功が得られた群と得られなかった群の間で,Range, Kurtosis, Skewnessに有意差を認めた.多変量解析ではSkewnessにのみ有意差を認めた.続いて,第一段階の特徴量のみ使用,第二段階の特徴量のみ使用,第一段階と第二段階の両者を使用,の三者におけるROC解析を行ったところ,第一段階と第二段階の両者を使用した場合の曲線化面積が最も大きかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により外来診療および手術が制限され,本施設でのMRI施行件数が当初の見込みよりかなり減っている.
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今後の研究の推進方策 |
造影MRIからの特徴量抽出に引き続いて,拡散MRIでの特徴量抽出を行い,化学療法の効果予測に有用な特徴量を導き出す.最終的には造影MRIのみ,拡散MRIのみ,造影MRI+拡散MRIのうち,どれが化学療法の効果予測に最も有効かを導き出す.さらに臨床・病理学的データを加味した場合,加味しなかった場合でどちらの成績が良いかも検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
学会がweb開催となり,旅費が不要となった.次年度も同様な状況が予想されるが,webを利用した情報収集に努め,できるだけ早い成果の公表,論文化のために,研究費を適切に使用していきたい.
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