研究実績の概要 |
本研究の目的はMRIより得られる膨大な情報を,ディープラーニングを用いて解析・選別し,オーダーメイド治療に直結する乳癌悪性度層別化プログラムを確立することである.治療開始前に乳癌の悪性度,すなわち予後を予測することが最終的な目標であるが,比較的予後が良好な悪性腫瘍である乳癌は予後の把握に時間を要する.欧米では遺伝子検査による予後予測結果と対比する手法が一般的だが,本邦では残念ながら遺伝子検査は普及していない. 本研究では課題を乳癌術前化学療法の病理学的完全奏功の予測に設定し,昨年度は術前化学療法によって病理学的完全奏功が得られた群と得られなかった群で臨床・病理データを比較し,病理学的完全奏功が得られた群では有意に腫瘍径が小さく,腫瘍内壊死が少ないという結果を得た.また造影MRI画像から得られた第一段階の特徴量を使用した検討では病理学的完全奏功が得られた群と得られなかった群の間で,単変量解析ではRange, Kurtosis, Skewnessに,多変量解析ではSkewnessにのみ有意差を認めるという結論を得た. 今年度は,第一段階の特徴量のみ使用,第二段階の特徴量のみ使用,第一段階と第二段階の両者を使用,の三者におけるROC解析を行い,第一段階と第二段階の両者を使用した場合の曲線化面積が最も大きいという結論を得た.また昨年度の造影MRIの解析に引き続いて,拡散MRIの特徴量を用いた検討に着手した.その結果,ADC, D, Dp, fの拡散パラメータの中ではADCが最も病理学的完全奏功の予測に有用であった.臨床データおよび画像の特徴のみ,拡散MRIの第一段階の特徴量を追加,拡散MRIの第一段階と第二段階の特徴量を追加,の三者を比較したところ,臨床データおよび画像の特徴に拡散MRIの第一段階と第二段階の特徴量を追加した場合が最も成績がよいことがわかった.
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