研究課題
本研究の目的はMRIより得られる膨大な情報を,ディープラーニングを用いて解析・選別し,オーダーメイド治療に直結する乳癌悪性度層別化プログラムを確立することである.本研究ではターゲットを乳癌術前化学療法の病理学的完全奏功の予測に設定し,初年度は術前化学療法によって病理学的完全奏功が得られた群と得られなかった群で臨床・病理データを比較し,病理学的完全奏功が得られた群では有意に腫瘍径が小さく,腫瘍内壊死が少ないという結果を得た.また造影MRI画像から得られた第一段階の特徴量を使用した検討では,病理学的完全奏功が得られた群と得られなかった群の間で,単変量解析ではRange, Kurtosis, Skewnessに,多変量解析ではSkewnessにのみ有意差を認めるという結論を得た.昨年度は第一段階の特徴量のみ使用,第二段階の特徴量のみ使用,第一段階と第二段階の両者を使用,の三者におけるROC解析を行い,第一段階と第二段階の両者を使用した場合の曲線化面積が最も大きいという結論を得た.また拡散MRIの特徴量を用いた検討では拡散パラメータの中でADCが最も病理学的完全奏功の予測に有用であることがわかった.最終年度はまとめとして,臨床データおよび画像の特徴のみ,造影MRIの第一段階の特徴量を追加,造影MRIの第一段階と第二段階の特徴量を追加,の三者の比較に入った.その結果,臨床データ及び画像の特徴に造影MRIの第一及び第二段階の特徴量を追加した場合に最も成績がよい(AUC=0.77)ことがわかったが,臨床データ及び画像の特徴に造影MRIの第一段階のみの特徴量を追加した場合,また第一・第二段階の特徴量のみの場合との差は僅差(AUC=0.76)であった.乳癌の悪性度層別化のためには臨床データ,画像データ,画像特徴量のすべてを活用することが望ましいが,さらに多数の症例での検討が必要である.
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
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