前年度に検出部をペンタセン薄膜に変更した後,検出感度を高めるために滴下方法及びベーキング温度や時間などの薄膜化条件の探索を進め,最適条件を決定することが出来た.また,配列を構成する全3×3個の検出器について,X線電流の総測定時間を短縮するために,全検出器のグランド電極を共通にした構造にすることで測定端子の切換え回数を削減した.その結果,全検出器の測定に要する時間は2.70秒となり,従来より1.73秒短縮することが出来た. X線の線量率を0.78~30.05 mGy/sの間で変化させて検出器配列に照射しX線電流を測定した結果,各線量率における電流値は印加電圧に対して線形に増加することを確認出来た.さらに,検出感度は印加電圧が高く,かつ線量率が低い場合に向上することが分かった.本研究では印加電圧が10 Vのとき,線量率0.78 mGy/sの照射に対して検出感度は最高の6.43 μC/Gy/cm2を示した. また,理論と実験値に基づいてX線電流から線量率への換算式を作成し,配列中の各検出器を用いて線量率をリアルタイム測定することが出来た.しかし,プログラムの作成が遅れたために線量率の2次元分布をリアルタイムで表示するイメージングシステムの構築には至らなかった. 一方,静止画ではあるが配列の一部を鉛板で遮蔽した状態で線量率の2次元分布を測定したところ,遮蔽領域と非遮蔽領域で線量率が異なる様子を観測することができた.つまり,本研究で作製した検出器配列による線量率のイメージングを実証することができた. 以上より,今後は測定した2次元線量率分布をリアルタイムで表示する部分のプログラムを完成させることで,最終目的であるリアルタイムでのイメージングが実現できるものと思われる.
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