研究課題/領域番号 |
20K08040
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
渡邉 英宏 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康領域, 領域長 (60370269)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高磁場MRI / ヒト脳内 / 代謝物 / スペクトロスコピー / 定量化 / 高周波磁場 / 不均一性 / 1H MRS |
研究実績の概要 |
本研究で提案する方法に関して詳細に検討した。 この提案法では、濃度基準ファントムとヒト脳で測定を行い、送信高周波磁場強度比のB1+比を算出する。均一領域でのB1+とB1-の同等性から、この比が基準ファントムとヒト脳でのB1-比(受信感度比)となる。ヒト脳でのVOI領域と画像均一領域との受信感度比は、これまでに開発した比率マップ法を用いて算出する。基準ファントムの均一領域でのスペクトル面積とこれらの関係から、ヒト脳内のVOIでのスペクトル面積との濃度の関係が求められる。 この提案法の実証を詳細に行うため、ヒト全身用4.7T MRI(Agilent製)を用いてファントム実験を行った。RFコイルには、送受信兼用TEM体積コイルを用いた。対象ファントムとして10 mMのNAA、Crの混合溶液を封入した小ファントムを入れた大円筒ファントム、基準ファントムとして生理食塩水を封入した球ファントムを用いた。B1+測定には位相法イメージング、B1-測定には断熱パルスSE法イメージングを用いた。スペクトルは、8mlのVOIからSTEAM測定を行い、提案法を用いて代謝物濃度を算出した。 この結果、基準ファントムと対象ファントムの均一領域でのB1+は、それぞれ、0.218 KHz、0.213 KHzと測定された。対象試料内のB1-比較では、均一領域とVOI領域との比率が0.649となった。基準ファントムの均一領域での水スペクトル面積が79.4であり、この結果、対象ファントムのVOIで、55.5 Mの濃度試料に対して、スペクトル面積 0.213/0.218*0.649 = 50.3のスペクトルが測定される換算となった。この関係を利用して、取得されたSTEAMスペクトルからNAA、Crの濃度を求めた結果、それぞれ10.7 mM、11.1 mMと算出され、試料濃度に近い値が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究で提案する方法について詳細に机上検討を行い、ファントム実験による詳細検討を行った。この結果、高磁場での受信感度分布のもとでも、基準ファントムとの比較で濃度定量化が可能であることが分かった。一方、コロナ禍の影響により、本年度計画していたボランティアデータ解析が実施できなかった。このため、従来行われている内部水標準化法を用いたト脳での代謝物濃度定量化での問題について再度検討した。
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今後の研究の推進方策 |
ボランティアデータ解析を実施し、ヒト脳内での代謝物定量について検討する。内部水標準法では、関心ボクセル内の受信感度分布が代謝物濃度定量値のばらつきの大きな原因となっていると考えているが、提案法ではこれを解決できることが期待出来る。内部水標準化法と提案法を比較するなどして、検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、計画していた国内学会、国際学会の参加が出来なかったことに加え、実験回数が減少し、少額の実績となった。
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