研究課題/領域番号 |
20K08043
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
原田 龍一 東北大学, 医学系研究科, 助教 (60735455)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | PETプローブ / アストロサイト |
研究実績の概要 |
本研究ではこれまでに研究代表者らが開発したアストロサイトに多く発現するモノアミン酸化酵素B(MAO-B)に対する選択的なPETプローブ[18F]SMBT-1のリバーストランスレーショナルリサーチを実施し、臨床研究で使用していくための技術的基盤を確立することを目的とする。まず最初にマウスに発現するMAO-Bに対する結合親和性評価を実施した。その結果、結合親和性(KD)はヒトMAO-Bと同程度であったが最大結合量(Bmax)がヒトと比較して6倍程度低いことが明らかとなった。これは前臨床研究においてマウスモデルで評価する際の検出限界に影響する可能性がある。また今年度はアストロサイトの画像マーカーとして利用されているイミダゾリン2結合サイトのリガンドであるBU-99008およびミクログリアの画像マーカーとしてよく利用されているPK11195との結合特性の比較を実施した。その結果、SMBT-1, BU-99008, PK11195はヒト脳ホモジネートに対してIC50が10 nM以下と高い結合性を示したが、結合サイトはお互いに異なることが明らかとなった。アルツハイマー病患者における各領域におけるトレーサーの結合量とアストロサイトのマーカーであるGFAPの量との相関を解析した結果、[18F]SMBT-1の結合量が最もよい相関を示した。また、[18F]SMBT-1の結合量は[3H]BU-99008および[3H]PK11195とも相関を示した。以上のことから、[18F]SMBT-1はアストロサイトの画像バイオマーカーとして有用であると考えられた。近年、反応性アストロサイトにも二つのサブタイプが存在し、NeurotoxicなA1とNeuroprotectiveなA2があることが示唆されている。本研究ではMAO-BがA1およびA2アストロサイトのどちらのフェノタイプを反映するのかを蛍光免疫染色により検証したところ、MAO-BはA1およびA2のいずれのマーカーとも共局在したことから、”Pan-astrocytes”マーカーであることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[18F]SMBT-1のマウスMAO-Bに対する結合特性を明らかにすることができた。また、他のアストロサイトマーカーとの比較研究が順調に完了し、おおむねその関係性を明らかにすることができた。MAO-Bを発現するアストロサイトのフェノタイプを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
[18F]SMBT-1の臨床研究で使用していくための技術的基盤の確立をすべく、代謝特性等を明らかにするとともに[18F]SMBT-1のMAO-Bに対する結合サイトを明らかにし、従来から使用されているMAO-BのPETプローブ[11C]DEDと比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
東北大学サイクロトロンラジオアイソトープセンターが改修工事に入ってしまったため、PET核種を利用した実験ができなかったため。次年度の使用計画はPET核種を利用した実験における消耗品と施設使用料として使用する。
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