研究課題
本研究ではこれまでに研究代表者らが開発したアストロサイトに多く発現するモノアミン酸化酵素B(MAO-B)に対する選択的なPETプローブ[18F]SMBT-1のリバーストランスレーショナルリサーチを実施し、臨床研究で使用していくための技術的基盤を確立することを目的とする。認知機能正常高齢者(CN:Aβ-/Tau-)、CN:Aβ+/Tau-、アルツハイマー病患者(AD: Aβ+/Tau+)の剖検症例の後部帯状回の切片に対して[18F]SMBT-1のオートラジオグラフィーを実施し、同一切片を使用して[18F]NAV4694(Aβ)、[18F]MK6240(Tau)のオートラジオグラフィーをさらに実施した。その結果、[18F]SMBT-1はCN:Aβ-/Tau-症例と比較してAD症例で高い結合を認めた。またAD症例にて[18F]SMBT-1、[18F]NAV4694、[18F]MK6240の集積が部分的に共局在していた。興味深いことにCN:Aβ+/Tau-症例においても[18F]NAV4694と[18F]SMBT-1の集積の共局在が認められ、病理学的にも老人斑の周囲にMAO-B陽性アストロサイトが確認された。これはPreclinical AD(CN:Aβ+)症例にて[18F]SMBT-1の集積上昇が認められるという臨床画像所見と一致する結果であり、 [18F]SMBT-1が反応性アストロサイトを反映したバイオマーカーであることを示すものである。さらにSMBT-1のMAO-Bに対する結合機序を明らかにするためにMAO-BとSMBT-1複合体の結晶構造解析を試みていたが、ついにMAO-BとSMBT-1複合体の立体構造が得られたため、結合機序の詳細な解析を進める。
3: やや遅れている
MAO-BとSMBT-1複合体の結晶がなかなか得られず、相互作用の解明が進まなかったため。
MAO-BとSMBT-1複合体の結晶構造が得られたため、MAO-BとSMBT-1の相互作用を解析し、論文発表する。また、臨床研究で使用されたPET薬剤を用いたオートラジオグラフィーの妥当性の検証の結果についても学会発表、論文発表する。
MAO-B-SMBT-1複合体の結晶を得るのに時間を要したため。次年度の使用計画は詳細な構造解析を進め、学会発表、論文発表の費用に使用する。
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J Neuropathol Exp Neurol .
巻: - ページ: -
10.1093/jnen/nlad018